盛和塾 読後感想文 第十一号

株式会社棚澤肇代表取締役社長、棚澤さんの “人を見下さず、負かさず、伸ばし育てて共に良くなる” は私も同じ様に悩んだ、いまだに悩んでいる最大の課題です。

“会社を良くするためにやっているんだ。---という形で固まっていますから理解してくれない人は悪人に見え、行動を共にしてくれない人は怠け者に見えました。私自身は志に忠実に誠意をもって生きているつもりでしたが、---人と見れば切りかかるような性格だったかもしれません。” と述べられています。

棚澤さんが上のような自分の間違いを反省したのは、1994年以前、若いころではないでしょうか。私は60になってやっと同じような自分の間違いに気が付いたのです。

盛和塾北大阪の代表世話人欠野さんのマスコンサルタンツの助言のもとに、“器の大きい人間になりたい” -この目的の為に240項目の願望を書くように指導を受けられ、それを毎日、見て、自分の潜在意識にしみ込ませる努力をされているとのこと、自分もそうすべきと思いました。毎日毎日眺めるというのは効果があると言っておられます。

棚澤さんは続けます。“いい話をいくら聞いても役に立たない自分が能動的に変わらなければ、何の値打ちもない、話がいいとか悪いとかじゃなく、自分が変わるかどうかに値打ちがあるんだ。塾長のお話を聞いても生かすか腐らせるかは自分の責任だ。” 

マスコンサルタンツの “内観” というプロクラムの中で、“三歳の時、お母さんに何かをしていただいたことを思い出して下さい”  “心配をかけたことを思い出して下さい” “これらからしてあげたいことを思い出して下さい” と言われて、ハッと気が付いた。“お母さんは私を負かそうとしてはいなかった。私を見下してはいなかった。自分を育てようと厳しくしていたのだ。”

 “自分が相手の人を見下していたり、やっつけてやろうという気持ちがあったから、相手の人はそれを感じていたのだ” ということに気付かれた。“人を負かそうとせず、見下さず、伸ばし育て、ともに良くなろうをすることが成功への唯一の道” と悟られた。これは私が一番悩んだことであり、今後この考えを実行して行くよう努力していきます。

 但し、塾長の講評は重要だと思います。“まっすぐに登ろうとするといろんな困難に遭遇します。普通登山をする人は消耗しないようにグルグル回って登ります。しかし、私は垂直登攀の使用を決めました。嫌われてもいいから、頂を目指してまっすぐ行こう。” これは、私が大好きなやり方です。経営者、リーダーは細やかさと鋼鉄にも似た断固として決断をする力強さが必要な時があると思います。

大胆な決断をする、できるためには、日頃からの準備が必要です。過去のリーダーとしての実績、仲間や従業員との人間関係を仕事を通じて、試行錯誤しながら、作り上げる努力を日頃からやり続ける必要があります。

株式会社トーケン代表者浅井さんの “この仕事は何のためにするのか、誰のためにするのか。”

“苦難は生活の不自然さ、心の歪みが映った危険信号である。即ち、苦難の原因になっている生活の過ち、心の不自然さを取り去ることが大事である。” という教えは、私達の周囲の出来事はすべて自分が造り上げたものだということだと思いました。

苦難を取り除くのには、一つ一つ自分の出来ることを実行していくことと思います。例えば、浅井さんが言っておられる様に

  1. “ 生きていることに感謝します。今日一日家族、全従業員が幸せでありますように” 声を出して毎朝天に向かって挨拶します。
  2. 両親、女房、子供、そして全従業員の一人一人の写真に向かって昨日のお礼と今日一日のお願いをします。手帳に全員の写真を張り付けていますので、毎日どこにいても全員と話をすることが出来ます。
  3. 会社が完全に再建でき家族を全従業員と喜びを分け合っている光景を思い浮かべる。

毎日1、2、3を実行することが周囲を変えていくことにつながり、良きことを周りに引き寄せることになると思います。  “従業員に接し始めると、自分の傲慢さや、いかに社員の話を聞いていなかったかが良く分かり、従業員が小さくなってしまっているのがわかりました。” と新たな気付きを見つけられた。こういう気づきが湧いてくるのは、社内コンパを各セクションごとにやって、コミュニケーションを図って、経営者としての考え、会社の進むべき方向を話、従業員と本音で話すことに時間と労力を費やしているからだと思います。

京セラの発展と京セラフィロソフィーの軌跡 

A. “ 謙虚にして驕らず更に努力”現在は過去の努力の結果、将来は今後の努力でと塾長は述べられています。

京セラは昭和52年の決算で売上480億円、税引前利益180億円、利益率は37%を達成していますが、塾長は “現在は過去の努力の結果であって、将来は今後の努力で決まるのだ。今日の栄光は決して将来のなんの保障にもならない。現在いいのは過去にわれわれが努力をしたからであって、将来は今からのわれわれの努力で決まる“ と警告を発しています。

私などは多少成功すると自然に声が大きくなり、自慢してしまいます。次のステップを忘れてしまいます。

不況の時には、新製品開発に全力をあげよう技術開発しか生き延びる道はないと絶えず大きな目標を目指し、従業員に語りかけておられます。

B. 自分の立てた目標を達成しよう

世界中が成熟し、爛熟した経済環境にあっては、モノはもう十分に足りており、競争も激化しています。こうした中で、業績を伸ばす為には新製品の開発以外はない。異業種、異分野への多角的展開を全社をあげて、取り組んでいくことが必要をなってきますと塾長は述べられています。

なんとしても頑張りぬいて、異業種、異分野の基礎だけでも築き上げていく、本年中に、固めておきたいと従業員に訴えていくことが必要だ。

一方では、創業以来もっている技術、もっている材料を使って、現在の従業員を生かすことにより、社会のニーズに合う新製品を開発することも忘れてはならない。

従業員が安心できる企業にしていこうと思うと、多角化を成功させなければならない。 “その為には潜在意識に透徹するほどの強い持続した願望、熱意を持ち続けることが必要だ” と従業員に解ってもらうために、真剣に語っていくことが欠かせないことだと思います。解ってもらうまで努力する、あきらめない。

経営者として、自分がたてた計画に対して真剣に考えられるかどうかが成功するかどうかを決定する。来る日も来る日も計画を達成したいと思うことがカギを握る。

C. 考え方x熱意x能力=人生の結果・仕事の結果

従業員に上の方式を説いて理解を求めることが重要である。学識経験以上に考え方がすべてを決めてしまうということ。

その為には “心を高める”という考えを経営者が理解し、従業員の中に入っていくことが必要。従業員に絶えず、時あるごとに、この方式の重要性を理解してもらう努力が不可欠。 

D. 先見性

京セラの昭和58年頃、マスコミは京セラには先見性があると騒がれましたが、“先見性というのはただ先が見えるというのではなく、あらゆる可能性を追求することによって、自分の会社を立派にしようと考え続けていることの結果、身につくもの” と塾長は語られています。

 

現場に出て語ろう

知識だけの哲学は役に立たない。単に知っているだけでは何の役にも立たない、かえって邪魔になります。知らなければ、困難に遭遇した時に、のっぴきならない状態に追い込まれた時に、生きのびる考え方を誰かから教わり、身の震えるような感動を経験し、自分を変えるということがあります。

本を読む時にもまた、従業員の話を聞く時にも “有意注意” を持って、意識して意を注ぐ。意識をそれに向けることが重要。本を何回も何回も読んで繰り返して勉強することにより、身に付きます。又、従業員の話を “有意注意” を持って聞くと、従業員も真剣に話をすると思います。 

思想や考え方の従業員との共有が必要不可欠だと思います。 “同じ考え方を経営の判断基準にし、行動規範にしている人たちが集まり、社風が生まれます。一人ひとりの従業員が無意識のうちに醸しだすのが社風であり、企業文化が生まれます。人間として何が正しいかを教えていないと経営技術や合理性、効率性という側面が中心になり、その面からのみ業績評価をしますと、不正行為などトラブルが発生しがちです。お金がすべてとなってしまう。” と塾長は述べられています。

訥弁の男が正しい経営哲学を従業員に伝え、辛抱強く、従業員の中に入り、あきらめずに、従業員に説いていかれたケースを塾長は経験されたそうです。感動の物語です。従業員が明るくなり、業績が向上し、経営とはかくも楽しいものがと悟る、“これこそ、経営が人生・人間性向上に役立った例だ”と思います。