盛和塾 読後感想文 第三十二号
京セラ フィロソフィー
目標を達成するまで粘る
成功するまで諦(あきら)めない
成功するかしないかは、その人のもっている熱意と執念(しゅうねん)に強く関わっています。何をやっても成功しない人には熱意と執念が欠けているのです。体裁(ていさい)のいい理由をつけて、自分を慰(なぐさめ)、すぐ諦めてしまうのです。
成功するには、目標達成に向って粘(ねば)って粘って、最後まで諦めずにやり抜くということが必要なのです。
研究開発(けんきゅうかいはつ)は成功するまでやりますので、失敗に終わるということは基本的にはありません。成功するまで続けるというものが、京セラでの研究開発に対する姿勢ですと塾長は述べています。
それは狩猟民族(しゅりょうみんぞく)が獲物えものを捕える時のような手法をとるのです。家族を飢うえから救うため、また村の人達の食料を確保する為に、獲物である動物の足跡を、目ざとく見つけ追跡(ついせき)する。獲物を捕まえるまでは、村には戻れないのです。家族や村人が待っているからです。
余裕のある経営は成功の前提
“成功するまで諦めない” ようにするには、その前提として “常に土俵の真ん中で相撲(すもう)をとる” ことが必要なのです。
松下幸之助さんが仰(おっしゃ)った言葉、“ダム式経営” は余裕のある経営の為に必要なのです。雨が大量に降って、それがそのまま川に流れ込めば、川が氾濫(はんらん)して洪水を引き起こし、災害を招いてしまいます。雨水を一旦ダムで堰(せ)き止め、それを必要に応じて放流すれば、洪水(こうずい)の発生を防ぐ為だけではなく、川の流れを絶やすことなく有効に水を使うことができる。事業経営の場合でも景気の変動に振り回されるのではなく、ダムで水を蓄(たくわ)えるように資金を蓄積(ちくせき)し、必要量だけを使うという余裕のある経営が必要なのです。
この余裕のある経営ができていませんと、“成功するまで諦めない”という手法はできません。
しかし、余裕がないからと言って諦めてはいけません。家をなくす、車をなくすような状態になったとしても、アパートに住む、自転車で営業に出かける等、工夫することが大切です。
人生の方程式
人生・仕事の結果 = 考え方 x 熱意x 能力
人生や仕事の結果は、考え方と熱意と能力の3つの要素の掛け算で決まります。
考え方は生きる姿勢であり、否定的であるか肯定的であるかによって、人生や仕事の結果は決まります。
熱意は、一生懸命に努力すれば、努力するだけ、人生や仕事の結果に貢献します。
能力は、人それぞれ生まれつきの与えられたものです。生かすかどうかは、本人の熱意によって決まります。
これら3つの要素が掛け算として人生・仕事の結果を決めるのです。
熱意と考え方
そんなに優れた能力のない人が、立派な仕事をしようと思えば、一番に思い浮かべるのは、一生懸命努力するということだと思います。
自分の能力を鼻にかけ、努力を怠った人よりも、能力はそれ程でもないが一生懸命に努力した人が人生・仕事に成功するのです。
そういう努力をしようとする熱意の源みなもとは、その人の持つ考え方によるのです。考え方がしっかりしていませんと、熱意 = 努力をする行為が出てこないのです。
人生の方向はプラスからマイナスまで一直線上にある
考え方とは、人生を歩いていくための方向です。人生の方向は一直線になっていて、プラスに向いて歩くか、マイナスに向いて歩くかという2つの方向があるのです。
頭が優秀で、体力もある人が、熱意を持ち、誰にも負けない努力をしているとします。ところが、その人がマイナスの考え方をしてしまいますと、人生の結果はマイナスになってしまうのです。
福沢諭吉の説く企業人
福沢諭吉は企業人について、以下のように述べています。
思想の深遠なるは哲学者の如く、
心術の高尚正直(こうしょうしょうじき)なるは元禄(げんろく)武士のごとくして、
小俗吏(しょうぞくし)の才をもってし、
土百姓の身体をもってし、
初めて実業社会の大人たるべし
・深い思想を持っている
・武士の持つべき忠と義を備えている。忠とは偽りのない心、まごころ。義とは道理・人の行うべきみちすじのこと。
・才能を持ち、頭が切れること
・丈夫な体を持っていること
このような人が、実業界で立派な人になるということを福沢諭吉は述べているそうです。これらは、考え方、能力、熱意の大切さを指し示しています。
マイナスの考え方で生きれば人生の結果もマイナスになる
よど号ハイジャック事件は、おぞましい事件でした。北朝鮮に脱出し、長年、北朝鮮に拘束された指導者を知っています。安保闘争の敗北の後、起きた日本赤軍の起こした事件でした。
若い頃、燃えるような正義感を持ち、不平等で矛盾(むじゅん)だらけの世の中を改革したい、みんなが楽しく過ごせる平等な社会を作りたい、と考えていたのです。ところが一部の人間 – 日本赤軍は、孤立化の中で、テロ行為を通じて、世の中を考えていこうとしました。自分の主義主張に合わない人は殺してでもその思いを実現したいというのはマイナスの考え方です。
若い頃、正義感にあふれ、素晴しい能力も熱意もあった青年が自分のたった一回の人生を、マイナスの考え方をしたために棒に振ってしまったのです。その指導者は51才で北朝鮮で亡くなりました。
良い心と悪い心
考え方にはプラスとマイナスがあります。プラスとは良い心、マイナスとは悪い心です。
良い心とは、前向きで建設的、協調性があること、明るいこと、肯定的であること、善意に満ちていること、思いやりがあること、優しいこと、真面目まじめで正直で、謙虚で、努力すること、利己的ではないこと、強欲ではないこと、足るを知っていること、感謝の心を持っていること。
まるで子供に言い聞かせるようなことです。“考え方が大事なのです。良い考え方をすれば、人生・仕事に成功します。” と言っても、大人達はよく分からず、マイナスの考え方をして、人生や仕事に失敗してしまう人が多くいます。
悪い心とは、後ろ向き、否定的、非協調的、暗く、悪意に満ちて、意地が悪く、他人を陥(おとしい)れようとする、不真面目で、嘘つきで、傲慢で、怠け者、利己的、強欲、不平不満ばかり言う、人を恨(うら)み、人を妬(ねた)む。こういったものが悪い考え方・マイナスの考え方なのです。
考え方こそが人生を決め、運命を変える
どんな思想を持つかは個人の自由で、自由な発想、自由な思想を持つことは大切なことと考えられています。どんな考え方をするかは自由です。しかしその自由の中で、自分がどのような考え方を選択するかによって、自らの人生・仕事、運命が決まってしまいます。
このような重大なことを、多くの人は気が付いていないのです。たとえ知っていたとしても、日常の生活の中で、“考え方こそが人生を決め、運命を変える。”という考えのもとに良い心を実行していない人が多いのです。自分自身に、私は良い心でもって日常生活をしているだろうかと問い正すことが大事なのです。
人生は心に描いた通りになる、と知識として知っていても、信じていないために、人生・仕事の方程式 = 考え方 x 熱意 x 能力、を信じていないのです。
中村天風さんは言っておられます。
“自分には輝くような未来が待っているのだ。素晴しい、幸せな人生が拓ひらけていくのだ。それをただ一点、建設的に、ポジティブに、前向きに思い、明るい人生を考えなさい。決して陰々滅々(いんいんめつめつ)とした暗い思いを持ってはなりません。”
中国の袁了凡(えんりょうぼん)という方が息子にあてた陰隲録(いんしつろく)という書物があります。
“人生はあらかじめ決まっているものではない。人間には運命というものがあるかも知れないが、それは宿命ではなく、変えようと思えば変えられるのだ。”
袁了凡という人が善きことを思うように心がけて、善きことを実行した結果、運命が良い方向に変わっていった。素晴しい人生を送ることが出来るようになった。と陰隲録に書かれています。
考え方が自分の人生を決める最も大切なものだということこそ信じ、そしてそれを実践していかなければなりません。
フィロソフィーは血肉化しなければ意味がない
正しい考え方を“知っている”だけでは、知らないのと同じです。自らの血肉として、人生の節々ふしぶしにおいて、日々の業務の中で、その考え方を活かすことが出来なければ、全く価値がないのです。
盛和塾で学んだことを血肉化し、自分の思想、理念、哲学にまで高めていかなければ、それはまだ自分の考え方になっていないのです。
フィロソフィーの内容を何度も何度も反芻はんすうし、血肉化して努めていくことが大切なのです。
価値ある人生を無駄に過ごさない為に
一日一日をど真剣に生きる
一回しかない人生を漠然と無意味に過ごすことほどもったいないことはありません。天地自然は、この宇宙で必要だったからこそ、我々を存在させている。この宇宙に我々は必要である。自分は大切な存在なのだ、ということを信じることが始まりです。
この宇宙は、我々の存在を認めてくれています。我々は必然性があって、この宇宙に存在している。この偉大な、価値のある人生をどう生きるのか、それは一日一日をど真剣に生きること、一生懸命努力することです。そうすることによって、我々人間の価値が決まっていきます。
厳しい自然界を生き抜く植物になろう
北極圏のツンドラでは、短い夏のうちに花を沢山咲かせ、種子を作り、そして寒い冬を乗り切ろうとしています。短い夏を精一杯生きようとしています。
日本でも高山地帯では、残雪が溶けはじめますと、岩場ばかりの高山地帯でも、草木が芽を吹き、花を咲かせます。やがて種子を作り、また冬に備えるのです。雑草でも一日一日を本当に真剣に生きていると思います。
アフリカの砂漠にも年に1~2度雨が降ります。雨が降るや否や、植物が芽を出し、花を咲かせる。そして1~2週間という短い間に種子を宿し、また雨が降るまで厳しい熱砂を耐え、生き延びていく。
我々人間も、一日一日をど真剣に生きていかなければなりません。