盛和塾 読後感想文 第四十九号

企業経営における倫理 - リーダーと人格について 

企業不祥事とリーダー 

アメリカ、日本において昨今、経営上の不祥事が多発しています。

能力もあり、努力もして頑張ってきて、企業を発展させてこられた立派な経営者が不祥事を起こすことがあります。 

経営者としての自分を過信し、当初持っていた素晴らしい企業経営理念を忘れ、変身していく経営者が不祥事を起こしているわけです。 

リーダーはどうあるべきかが厳しく問われています。 

日本の格言には、“才子、才に溺れる”とあります。“才覚” に恵まれた人は、その並外れた才能を持って大きな成功を収めるけれども、その “才覚” を過信すれば、その使い方を誤れば、やがて破綻に至るという日本の先人の言葉です。 

才覚努力人格 

人並外れた “才覚” や “努力” の持ち主であればあるほど、それらを発揮する時には充分コントロールすることが求められています。塾長はそのコントロールできるものはリーダーの持つ“人格” であると語っています。 

“人格” こそがその人の “才覚” を発揮する方向と “努力” を重ねる方向をコントロールすることが出来ます。“人格” に歪みがあれば、“才覚” や “努力” を正しい方向へと導くことが出来ず、結果として経営を誤らせてしまいます。 

人格は生まれた時以来の “性格” と人生の中で学んだ “哲学” によって作られています。人生の途中で素晴らしい哲学を学んでいる場合は、生来の性格を正しい方向に向けることが出来、リーダーとして成功することが可能だと思います。 

哲学を繰り返し学ぶ 

身につけるべき素晴らしい “哲学” とは、長い歴史の風雪に耐え、人類が長く継承したもので、人間のあるべき姿、持つべき考え方を明らかにし、先人が我々に残してくれた教訓です。 

“知っていることと実践できることは違う。” ということに留意することが大切です。先人の教訓を知識として知っているだけでは価値がありません。自分を戒め、人格を高める為に役立つものでなければなりません。 

リーダーにとって必要なことは、人間のあるべき姿、持つべき考え方を繰り返し学び、それを常に理性の中に押し留めておけるように努力をすることです。 

スポーツ選手は、素晴らしい肉体を維持する為、日々肉体を鍛錬します。それと同じくリーダーも絶えず人格=心の手入れをする-繰り返し素晴らしい哲学を学ぶ-ことが必要なのです。 

心の手入れ 

人格-心の手入れをするには、意識的に学ぶことと反省が必要です。

  1. 哲学書を毎日読む時間を作る。
  2. 学んだことを他の人々と共有する。
    従業員と朝礼で、勉強会で学び合う。
    盛和塾例会に出席する/盛和塾機関紙を読む。
  3. 毎日反省をする。
    毎晩5分間、一日の中で自分の言ったことややったことを反省する。
    人として恥ずかしい事を言ったり、人の道に外れたことを行わなかったか反省する。 

企業統治に近道はあるか 

“企業統治には近道はありません”と塾長は語っています。

リーダーが古今東西の素晴らしい哲学を座右のものとして毎日紐解き、“人格” 向上に努め続ける。高潔な “人格” を維持しようと努力を続ける。これこそが、リーダーを、企業を転落から未然に防ぐ最善の方法であると塾長は述べています。 

日々の研鑽が高い人格を維持する 

塾長は語っています。“私の人生は経営を通じて理念を高め続ける毎日でした。” 理念、哲学というものは、一度理解したからいいというものではなく、永遠に高め続けなければならないのです。 

常に “心” の手入れをし、人格を高く維持しようと努力すれば、人格というものは立派なものに変わっていくのです。 

人間は繰り返すことで物事が身に付き、そうすることではじめて、重大な経営判断を迫られた時、自然とその身についていることが出てくるのです。 

企業経営に不可欠なプリミティブな教え 

企業の犯した犯罪行為のほとんどは “嘘をつく” “騙す” 等、トップ自らが部下に向かって指示をすることによって発生しているのです。 

リーダーとして当然知っているプリミティブな教え;

“人を騙すな。”

“嘘を言うな。”

“正直であれ。”

を無視して犯罪行為・不祥事が発生しているのです。 

不祥事が発生しますと、トップは以下のように応えます。

“こういう不祥事はあってはならないことです。二度と不正が起こらない様に企業内でルールを作り、再発防止のシステムを作ります” 

しかし、犯罪者が再発防止のルールを作ることは不可能です。 

何故ならば、不祥事の本当の原因は犯罪を犯したリーダーの心-人格だからです。“人を騙す”“嘘を言う”心を変えなければならないのです。 

企業不祥事を無くす為には、責任者であるトップが最もベーシックな、人としての原理原則を毎日反芻し、自分に言い聞かせ、実践する必要があるのです。

リーダーが果たすべき10の役割 

リーダーが果たすべき役割は、洋の東西を問わず、共通のものです。アメリカ、日本、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、どの地域でも通用し、各地のリーダーにも理解し、納得出来るもの、実行出来るもの、そういうリーダーの役割があるのです。 

  1. 事業の目的異議を明確にし、それを部下に指し示すこと

何のためにこの事業をするのかといういう事業の目的、意義を明確にし、その目的や意義は、自分自身がその崇高な目的のために働くという大義名分が感じられるものであれば、多くの部下の力を結集して、その力をまとめて行くことが出来るのです。 

例えばNorthridge Homes, Inc.の場合は、“お客様に最適な住宅を提供することによって社会に貢献し、従業員の物心両面の幸福を追求する。” ということがあります。 

リーダーは部下を引っ張っていくために、このような高遠な目的、意義を明確にしておく必要があります。 

  1. 具体的な目標を掲げ、その実現計画を立てる

リーダーは具体的な目標を立て、それを実現するための計画を立てることが必要です。 

目標や計画を立てるにあたって、リーダーはその中心になりますが、その際、幅広く部下の意見を聞き、衆知を集めることが必要です。 

トップダウンで決めるだけでなく、目標や計画の策定段階から部下を巻き込み“自分達が立てたものである”という意識を、すべからく、部下にもってもらうようにします。 

トップダウンで大きな目標を決定する場合でも、なぜそのような目標や計画が必要なのか、部下たちに懇々と説明しなければなりません。トップが下した決定に心から納得するまで、徹底的に話をしていくことが必要です。 

  1. 強烈な願望を心に抱き続ける

リーダーは強烈な願望を心に抱き続けなければなりません。その強い願望を持って、目標を達成するようにしなければなりません。 

潜在意識にまで透徹するほどの強く持続した願望、熱意によって、自分の立てた目標を達成します。トップが高々と目標達成のためのスローガンを掲げて、部下を引っ張って行くのです。 

願望とは寝ても覚めても心に抱いているような強烈な願いです。 

強烈な願望を部下と共有するため、あらゆる機会を通して、又、コンパを開催し胸襟をひらいて、部下たちと目標を達成することの意義やその願望を徹底的に話し込むことが大切です。 

リーダーの強い願望を部下に理解してもらい、部下の士気がトップの士気のレベルまで上がることによって、全員の力を結集させることが出来るのです。そうすることによって、願望を成功させることができるのです。 

  1. 誰にも負けない努力をする

誰にも負けない努力をするリーダーがどの経営にも必要です。リーダーが誰よりも一生懸命仕事に打ち込む姿を見て、部下がそれを真似てくれるようになるまで、誰にも負けない努力を払うことが大切なことです。 

リーダーはどの仕事でも渦の中心になり、一生懸命働き、率先垂範し、部下を引っ張っていきます。 

  1. 強い意志を持つ

リーダーは強い意志を持たなければなりません。 

ビジネスには景気変動や予期せぬ事態がつきものです。競合他社との競争や、厳しい顧客からの要求もあります。強い意志を持たないリーダーは、一度立てた目標をすぐに撤回や下方修正をしてしまいます。目標は有名無実となってしまいます。そればかりか、リーダーの信頼も尊敬も失ってしまいます。 

一度立てた目標は何としても達成するという強い意志 – これはリーダーとしての大切な資質の一つです。 

  1. 立派な人格を持つ

リーダーは立派な人格を持っている必要があります。リーダーは立派な人格を持ち続けることの重要性を自覚し、努力を重ねて行く人でなければなりません。 

すばらしい哲学を持つ、学び続けると同時に、先人達、両親、学校の先生からの一見単純な教え –“人を騙さない”  “ウソをつかない”  “貪欲であってはならない”  “正直でなければならない” -をしっかりと守れる人がリーダーです。 

立派な人格をリーダーが持つことにより、誤った経営判断や不祥事の発生を防ぐことが出来るのです。 

  1. どんな困難に遭遇しようとも決してあきらめない

リーダーはどんな困難に遭遇しても、決してあきらめない人、あきらめることを知らない人、なのです。 

はげしい競争の中で、経済状況のドラスティックな変化に遭遇してリーダーは “闘魂” を持ち、集団を引っ張っていかねばなりません。 

  1. 部下に愛情をもって接する

愛情とは、相手を思いやる気持ち、利他の心です。

しかし、その愛情は部下を甘やかす小繕であってはなりません。つまり目先のやさしさではなく、長い目で見て、本当に当人の成長や発展につながるなら、敢えて厳しさを持って対処する真の愛情 – 大繕でなければなりません。 

リーダーは部下の人たちの幸せを常に心に留めて部下をまとめ、引っ張っていくのです。 

  1. 部下をモチベーションし続ける

リーダーは部下の人たちをモチベーションし、やる気を起させる様に努めなければなりません。部下が常にやる気をもって仕事ができるように気を配ることも、リーダーの大事な役割です。 

部下が困っている時は相談に乗り、アドバイスをして元気になるようにはげますこと、予定を達成した時や、立派な仕事をした時には、ねぎらいの言葉をかけること等、リーダーは日頃から部下の動向に注意を払うことが大切です。 

  1. 常に創造的でなければならない

お客様の視点から、新製品や新しいサービスを考える、技術開発/発明が社会のシステムやビジネスモデルをダイナミックに変えてしまう時代です。その時リーダーは3年、5年先に何を新製品として、新しいサービスとして提供するのか、将来に絶えず目を向けて、創造的な仕事をリードしていくことが求められています。 

企業が生きのびる為には、毎日の創意工夫をおろそかにしてはいけません。リーダーは絶えず現場に出向き、次から次へと技術開発、新製品開発、新しいサービスの提供と創造的な分野でも、リードして行くことが要求されています。