盛和塾 読後感想文 第五十号

人は何のために生きるのか 

京セラ設立後、塾長は、経営経験のない中で、次第に京セラという会社はどうあるべきかを考えました。27人の従業員を路頭に迷わすことはできないこと、京セラ設立を支援していただいた方々への御恩とご厚意に報いなければなりませんでした。 

  1. 全従業員の物心両面の幸福を追求する会社へ 

ファインセラミック材料を開発した稲盛和夫の技術を世に問うのではなく、最優先するのは従業員の物心両面の幸せを追求することと考えました。従業員をいかに幸せにするかということを会社の目的と決め、実践していきました。 

  1. 人間として正しいことを正しいままに貫く 

経営をするには、毎日経営判断を迫られます。経営経験のない塾長は、従業員の人たちが次々と判断を求めてくることに対して判断をしていきます。その時の判断基準は “会社であれ何であれ、人間として正しいことを正しくやっていく。” というものでした。会社経営の難しいことは解からないが、子供の頃、両親や学校の先生に教わった、人間としてやってよいこと悪いこと、それを基準として経営判断をせざるを得ませんでした。 

京セラはその後、順調に成長発展を遂げてくるのですが、それは自分達だけの努力でなく、周囲の方々にいろいろと助けていただいたからでもある、決して成果を自分達だけで独り占めしてはいけない。世のため人のためにお返しをしなければならない。

“世のため人のために尽すことが人間として最高の行為である。” と信じた塾長は、稲盛財団が主催する京都賞を作った。 

  1. 動機善なりや、私心なかりしか 

当時、NTTが独占して来た日本の電気通信事業が民営化され、民間からも電気通信事業に参入できることとなりました。NTTの通信料金は海外の通信料金と比べて、非常に高いものでした。国民のために、何とか通信料金を下げたいという正義感があったそうです。 

塾長は自問しました。この通信事業への参画には私利私欲の心が自分にあるのではないかと厳しく自分自身の本当の意思を確認したのでした。そして“動機善なりや、私心なかりしか”と自問すること6か月を要したのでした。 

こうして、自分の本当の動機は善なのだ、私心はないのだと確信して、第二電電の操業に踏み切ったそうです。同じく参入して来た企業が撤退するなか、第二電電は着実に発展していきました。 

第二電電(KDDI)は売上3兆円の企業に成長しました。 

  1. 世のため人のためという考えが成功を導く 

何も知らなかった故に、子供の頃に両親や学校の先生から教わった人間として正しいことをしていこうという一点を判断基準に置いた。えげつないことをして金儲けをするのは経営ではない、正しいことを貫いて利益を得るのが経営だという結論に達しました。 

  1. 六波羅蜜(ろくはらみつ) 

お釈迦様は悟りをひらくための修行として六波羅蜜を説かれました。悟りをひらくとは、人間性を高める、心を美しく、きれいにすることです。心を磨いて美しいものにしていけば、悟りの境地に達することが出来、人生にも成功することが出来ます。 

六波羅蜜:  布施(ふせ)             - ほどこしをする/人のため

                    持戒(じかい)         - 戒律を守る

                    忍辱(にんにく)      -  耐え忍ぶ

                    精進(しょうじん)  - 一生懸命努力をする

                    禅上(ぜんじょう)  - 心を沈めて反省する

                    智慧(ちえ)    - 上記5つを守れば、智慧、宇宙全体を司る知恵を得られる 

精進(しょうじん)

これは一生懸命に働くこと。会社を潰してはならない、従業員を路頭に迷わせてはならない、という一念で塾長は一生懸命働きました。その一生懸命働くことが自分自身の心を磨くこととなりました。従業員のために働いたことが、自分の為にもなっていたのです。“情けは人のためならず。” 世のため、人のために尽すことが実は自分自身の心を美しく、きれいにすることにもなるのです。 

  1. 人生の目的は魂を磨くこと 

0年~20年     社会に出る為の準備

20年~40年   一生懸命働く

40年~60年   〃

60年~            死を迎える為の準備期間 

人間の一生は上記のようなものではないかと塾長は考えられました。 

人は必ず死を迎えます。人間には肉体と共に魂があります。死は、肉体はこの世に置き、魂はあの世へと向う新しい旅立ちと塾長は考えています。肉体は滅んでも人間は魂という形で永遠に生き続けるのだと考えられています。 

死が魂の新しい旅立ちとした場合、私達は何の準備をしなければならないのでしょうか。両親のもとに生を享けますが、実は何百年も前から生き長らえている魂が、その赤子に引き継がれていくのではないかと思います。新しい魂の旅立ちが始まるのです。 

人生では成功があったり、不幸があったり、災難があったりいろいろなことが起きます。人生において成功することが望ましいのですが、例えば、立派な会社をつくったり、立派な業績をあげたり、学問を究めたりすることも大切なことですが、この現世で素晴らしい美しい心を磨き続けることが人生の目的と考えます。心を磨き続ける為には、私利私欲にはしるのではなく、世のため人のために一生懸命働くことが必要なのです。 

  1. 善き思いと善き行いが運命を変える(因果応報の法則) 

人間にはそれぞれ運命があると言われています。自分が生まれて来た時から、歩むべき道がすでにひかれていると考えられています。 

しかし運命は変えることが出来ます。運命を縦糸とすれば、横糸には善きことを思い、善きことを行えばよい結果が生まれ、悪いことを思い、悪いことを行えば悪い結果が生まれるという因果応報(いんがおうほう)の法則があるのです。 

運命的に悪いときにさしかかったとき、自分の善き思い、善き行いによって自分の人生を好転させることができるのです。 

因果応報の法則については中国の明時代の賢人、袁了凡(えんりょうぼん)が書いた息子への手紙、陰隲録(いんしつろく)という本に書かれています。 

  1. 人生を素晴らしいものにするために 

いくらお金持ちになっても、名誉を授けられようとも、有名になろうとも、私達は死ぬときには魂だけであの世に旅立たなければなりません。その時自分が持っていくものは“美しい心”をもった魂しかないのです。人生で苦労し、やさしい思いやりのある、美しく、素晴しい魂になっているかどうかが大切です。 

どんな災難に遭っていようとも“忍辱(にんにく)” 耐え忍ぶことが大事です。自分の人生は必ず明るいものになるのだと信じることが大切です。自分の心を明るくします。 

自分の身近にいる家族、近所の方々、同僚、社会の為に少しでもよいことをする - 善きことを思い、善きことを行う – そういう気持ちで毎日を過ごす。この積み重ねが自分の人生を好転させます。