盛和塾 読後感想文 第五十二号

採算意識を高める 

京セラではアメーバ単位(事業部制)で、時間当り採算制度を実施し、職場での仕事の結果が誰にでもはっきりと分かるようになっています。社員一人ひとりが経営者の意識を持って、自分たちのアメーバの時間当り付加価値をどうしたら高めることが出来るかを真剣に考え、実践していかなければなりません。 

常日頃、紙やクリップの一つに至るまで、モノを大切にしようとするのは、この時間当りの付加価値を高め、アメーバの業績に貢献する為なのです。 

全従業員が経営者意識を持って、採算意識を高めていくことが大事なのです。 

企業のパイロットとしての役割を果たすには 

経営者の為の経営管理システムをつくる           

個々の事業の実態を的確に把握することが重要であることを経営者は知っていますが、実際に的確に把握することが出来ていないのが現状です。 

経営者は操縦席に座っているパイロットです。飛行機のコックピットに座りますと、前に計器がズラリと並んでおり、その計器を見て操縦します。経営においても、経営判断の指標となる数値が経営者に把握できるシステムが出来ていなければ、いくら素晴らしい着想をもとにビジネス展開を図ろうとも、経営は成功しないのです。 

それには、どういう指標が経営者の目の前に出てくるようにするのかが重要です。各経営部門別に、経営に対する指標が必要なのです。経営は盲目飛行では成り立たないのです。経営状況が大変良く分かる、それも迅速(じんそく)に、経営情報が入手できるシステムが必要なのです。月次決算は月末から一週間あるいは、10日以内に数字がまとまるようでなければいけません。財務諸表-決算書、それだけではなく、経営管理-採算管理に必要な経営資料も必要なのです。すなわち、経営者が本当に使いやすい経営管理システムがどうしても必要なのです。経営の専門家の視点ではなく、経営者の視点から見た経営管理システムが経営には不可欠なのです。 

経営者は、毎日自分が見て正しい経営判断を下すことができるように経営指標を、タイムリーに出てくるシステムを構築していかなければなりません。 

経営の実態が正しく見えなければならない 

例えば、初期投資が大きい会社を設立した場合は、固定費が経費の大部分を占めます。減価償却費、人件費、賃貸料、支払利息等が固定費として発生します。売上が損益分岐点に到達しますと、売上増は確実に、利益を生み出します。 

このような事業の場合は、最初に一定以上の売上が確保できるかどうかが、事業の成否を決定します。ですから、事業をスタートさせた時の取り組みが大切です。スタート時にどのように売上を確保していくかが重要なのです。“初戦に勝つ”ことが分かっている従業員でなければ、その事業を任せることはできません。“初戦に勝つ”為には、厳密な採算管理が必要です。その為には、初期の設備投資をした場合、売上高がいくらあれば損益分岐点が達成できるか、顧客はどのように確保していくのかを厳密に検討していくことが重要です。 

業務スタート後、毎月の損益計算書をレビューしますが、その時、業績の変動をそのままにするのではなく、自分が経営している会社の実態が正しく見えるようなシステム-変動原因が分かるもの-を作り、変動要因を除去することが肝要です。

独立採算の部門別採算と一対一対応の原則

ある企業の実態をなるべく正確に把握する為には、独立採算の部門別管理が重要です。独立採算の部門別採算は、収益性を高める為には必要なのです。一般には異なった事業を単純に分けると思いますが、たとえ一つの事業であっても、部門別に経営管理情報を迅速に提供することのできるシステムが必要です。こうしたシンプルで正確な、迅速な経営情報は全従業員に公開され、共有することが肝要なのです。

また、個々の取引でも、取引一つひとつについても堅実な処理が必要です。例えば、契約金を前払いでいただいた場合は、売上ではなく預り金です。実際に仕事が完了した時点で売上として計上し、それに関わる費用は費用として計上します。

また、お客様との間に売買契約があった場合、契約した金額の振り込みを確認した後、工事発注、材料発注等を行います。

お客様から頂いた仮受金は、お客様に商品をお届けするまでは売上ではありません。メーカーから製品を仕入し、在庫処理出荷処理した後、売上計上します。それに応じてメーカーへ支払った製品仕入れ原価を売上原価として処理します。これが、一対一の対応の原則なのです。

多くの企業では、本当に必要とする数値が出てくるシステムが出来ていないようです。もし業績が悪い場合、それは経営が拙(まず)いという事だけではなく、経営管理の在り方にも問題がある場合があるのです。 

企業において、経営指標となる数値がすぐに出る経営管理システムを作り上げた時に初めて中小・中堅企業から大企業へと飛躍していく基礎が出来ます、と塾長は述べています。 

セグメント毎の分析や、一対一対応の原則を守っていくことにより、会社が発展し、オペレーションが全世界に拡大しても、瞬時に経営の実態を見抜き、正しい判断が出来るのです。 

採算単位の分け方 

各部門別、セグメント別に採算単位を分ける必要があります。製造と営業をに分けます。製造は製品グループ別に更に細分化します。各製品グループは更に製造工程別に細分化します。 

従って工程は、小さな企業として、前工程は仕入先、後工程は得意先と考えます。 

セグメント毎に分け、一対一対応の原則を実施しますと、各工程の管理が大変です、と考える経営者がほとんどです。管理に従業員の時間を使うよりも、営業に時間を配分した方がよいと考えるのです。 

本当に経営に必要な経営指標を知るためには、そのシステムの構築にも相当の時間をかけなければなりません。しかし、管理倒れに陥(おちい)るかというとそうではないのです。その手間を上回る大きなメリットがあるのです。 

原価主義の弊害 

売値を決める時には、営業の人が市場価格を調査し、売値を決めます。売値からコミッション、一般管理販売費を引き、目標利益10%と設定します。そうして、目標原価=売値-(コミッション+一般管理販売費+10%目標利益)が決められます。製造部はこの目標原価以内にコストを下げればいいと考えます。ところが、製品が市場に出回った時に市場価格が2割位下がることが良くあります。こうした場合、会社は10%の目標利益を達成できなくなります。 

製造部門は目標原価を達成すれば、自分たちはよく頑張っていると思うのです。 

この目標原価の考え方は、市場価格に直結した経営管理システムというものがない場合に良くあるのです。売値は経営トップが判断し、どうしたら原価を引き下げることが出来るかという会社全体の経営意思決定のシステムが必要なのです。社長は市場価格が2割下がったのであればどうしたら原価を引き下げることが出来るか考えて、製造部門と迅速に協議する必要があるのです。原材料の仕入れ部門、製造工程・管理部門、全社に社長は激を飛ばしていく必要があるのです。製造現場に利益源泉があることを製造部門の従業員に知らせることが大切なのです。 

原価主義というのは、製造部門のコストダウンへの努力を阻害するのです。 

経営の常識に囚われない 

経営者の中には、数量によって原価は変わります。従って販売部の方が売上数量を通常決めますから、結局は販売部が原価を決めると考える方がいます。 

こういう経営者は、新製品を売り出す時、“来年に売上げが伸びてくれば、ちゃんと利益が出てくるよ。”と言います。これは数量によって原価が変わるという金科玉条(きんかぎょくじょう)になっている概念に基づいている考え方なのです。例えば、“ニューヨークにオフィスを構えますと、初めは色々と経費もかかりますから、売上がいくら以上にならないと黒字転換は出来ません。”  “売上を上げる為に、優秀なセールスマンを雇いたい。これで売上が増えればペイします。” 

赤字なのに更に新しい人を採用すれば、ますます赤字が増えるのです。赤字が増えたらどう対処するか、私は質問します。自分の給料を返上してでも新しい人を雇うぐらいの気構えが必要なのです。 

経営とは、売上増加に応じて泥縄式に手を打っていけばよいと思います。売上を最大にして経費を最小にすることに傾注すべきなのです。 

創意工夫による経費の極小化 

よくある経営者の話ですが、“当社は材料費は売上の30%、人件費は30%、経費は30%、純利益は10%を目標にしています。材料費と人件費の削減は難しいので、経費をいかに少なくするかを常に考えています。” 

あらゆるコスト-原材料費、人件費、経費-を削減対象として考えるべきです。固定概念で考えないようにします。 

良い製品でも、市場価格がありますから、高い価格をつけることは出来ません。市場で値決めがなされるのです。そうしますと、上記の3つのコストをどう下げていくかという事になります。 

例えば、材料費について、長年仕入れしていた仕入先以外にも、新しい仕入先を見つけたり、新しい素材を見つけたり、歩留(ぶどま)り率を上げるとか、色々な創意工夫をするのです。

一般常識に基いて経営を行ってはならないのです。