盛和塾 読後感想文 第六十三号

ものごとをシンプルにとらえる

ものごとの本質をとらえるためには、実は曖昧な現象をシンプルにとらえなおすことが必要なのです。事象は単純にすればするほど本来の姿、すなわち真理に近づいていきます。 

一見複雑に見える経営も、つきつめてみれば“売上を極大に、経費は極小に”という単純な原則に尽きるのです。京セラの“時間当り採算制度”もこの単純化してものごとをとらえるという考え方をベースにしています。 

単純化しますと、誰もが理解することができます。そこから、実践することができるようになります。いかにして複雑なものをシンプル化してとらえなおすかという考え方や発想が大切なのです。 

会計“能力”を高める 

経営者としての“能力”を高める

人生と仕事の結果を決める三つのファクターとして、考え方 x 熱意x能力があります。能力は持って生まれてきたものなので、人それぞれ違います。人間に与えられた能力は変えることはできないのですが、能力にはいろいろな分野があり、ひとり一人がユニークな能力を持って生まれて来ているといえます。 

ある仕事をする時、自分には十分な能力があると自信を持って優秀だと思っている人もありますが、いや自分には大した能力はないが、“誰にも負けない努力”を払う熱意を持っている。熱意でもって能力の差を埋めることができるのです。 

考え方と熱意で全力疾走した京セラは自分たちの持っている能力、技術は決して優れたものではないと自覚していました。自分たちの取り柄は熱意しかないのだと思った京セラの経営者、従業員は、朝から晩まで必死に働きました。 

マラソンに例えれば、京セラが競争している相手は、京セラのはるか先を走っている人たちでした。そのマラソンレースに無名の能力のないランナー京セラが参加したのです。自分の調子に合せて走っていたのでは勝負にならない。100メートル競走と同じスピードで走り続けようではないかと考えたのでした。 

無謀にも近い情熱と努力で走り始めたのでした。そのように走っていくうちに、次第に慣れてくるのです。例えば工場の中で動き回る際にも、駆け足で次の課に行くという具合です。100メートルダッシュのスピードを維持しながら長丁場を走ることが可能になり、こんにちの京セラを作ってきたわけです。 

考え方では、良い考え方と悪い考え方があります。良い考え方はプラス、悪い考え方はマイナスです。自分の能力と熱意により頑張ってきた仕事も、良い考え方をしなければプラスにはなりません。良い考え方とは、事業の目的・意義を明確にし、大義名分のある誰もが同意する哲学のことです。良い考え方は周囲の人、お客様、社会から受け入れられます。能力もたいしたことはないが、熱意があり、良い考え方がある場合は、すばらしい結果を生みだすことになります。 

考え方がいい加減なものであった時は、その差は大きく広がっていきます。事業経営であれば、その差が会社の成長にそのまま現れ、素晴しい立派な会社、平均的な会社、消滅していく会社という大きな差になっていくのです。 

経営者が自社の会計システムの有効な使い方を知り、実践しているかどうかが大きな格差をつくります。立派な考え方があり、誰にも負けない熱意がある経営者が、会計システムの有効な使い方を知り、事業経営に役立てるようにすることが必要なのです。“会計が分からんで経営ができるか”ということなのです。 

経営トップが経理・会計というものを十分に理解し、それを分析する知識がなければ、会社というものは決して立派になりません。 

  1. 一対一対応の原則 

モノ、お金の動きと会計処理(伝票)は一致させる

月次決算を見てみますと、今月はマイナスでしたが、翌月は急に利益があがったということがあると思います。これは、一対一対応ができていない証拠なのです。売上は毎月同じレベルなのに、利益は毎月大巾に変動することはないはずなのです。 

利益変動の原因はモノと伝票の不一致によるものなのです

品物の仕入があり、倉庫に入庫しましたが、仕入書類が届いていない為、仕入の計上ができていない場合があります。お客様からは、早く納入するように催促され、仕入計上はしていないが売上が計上されます。そうしますと、売上原価はゼロで売上は計上されます。大きな利益が計上されます。

翌月仕入計上がされ、売上原価が発生します。しかし売上は先月計上されていますから、売上計上はありません。大きな損失が発生します。 

仕入書類がまだ届いていないが、品物が入庫・検品された時はどう会計処理するか、経営者、経理担当者は知っておく必要があるのです。 

(借方)棚卸資産 100,000 (貸方)買掛金 100,000

    (発注書をもとに仮計上)

(借方)仕入諸掛り 5,000 (貸方)買掛金 5,000

    (仕入諸掛り 見積もり5%) 

このように品物が売られた時には会計処理(売上伝票)もついていく、また品物を買った時には、会計処理(仕入伝票)がついていく、経理の基本が抜けてはならないのです。これを発生主義会計といい、現金主義会計ではない考え方なのです。現金主義会計では実際に売上入金、仕入支払いが起こらない限り、会計記帳はしないのです。 

意図的な経理操作を防止することが大切です。

出張仮払いには担当部署の職員が仮払い申請書を作成し、担当部署の課長の承認を得、経理へ提出し、経理の許可をもらって、現金を受け取り、出張します。出張した後は、直ちに出張精算をします。 

ところが社長は経理に行き、仮払い申請書も作成せず、直接現金を受け取ることがあります。出張後も精算せず、精算処理が何か月も放置されます。部長も課長も社長と同じことをするようになってきます。 

これも一対一対応の原則を無視した例です。経営者が一対一対応の原則を守らなければ、社員も同様なことをするわけです。 

商社の場合は、売上の貸し借りをすることがあります。今月は1億円売上が足りない、長年のお客様に電話で“申し訳ない、今月売上が1億円足りないので、こちらで売上を今月計上させて下さい、来月には返品処理をしますから”と依頼します。品物は届けませんし、返品もありませんが、会計処理(売上伝票、返品伝票)はなされるのです。これも一対一対応の原則を無視した、経理操作が行われる例です。 

しかし来月も売上目標が達成出来ず、ますます深みにはまり、粉飾決算になってしまうのです。 

納品伝票がない為に売掛金の回収ができない

お客様から電話があり、すぐに部品を持ってくる様依頼されることがあります。セールスの人は倉庫に行き、倉庫の担当者にお客様の要望を伝え、部品倉庫の棚の部品を自分の車に乗せ、お客様に届けました。この時、発注伝票、納品伝票も作成していないのです。 

一か月後、売掛金の回収に行きました処、お客様の仕入部買掛担当の職員は、“お宅の方からの仕入れの記録がありません。何かの間違いでしょう”と支払いを断られます。何月何日に研究所のAさんに部品をお届けしたのですが、Aさんも忙しさにまぎれて、記憶にありません。こうしたことは一対一対応の原則を守っていない為に発生するのです。 

納品伝票は必ず発行して受領印を必ずいたたくことが必要なのです。面倒なことですが、こちらから納品書を持って行き、お客様から受領書にサインをいただければ、お客様の方では買掛金に計上され、こちら側では売掛金に計上されます。

すなわち、品物がお客様へ届けられた時は、お客様では会計処理(仕入伝票)がなされ、こちら側では会計処理(売上伝票)がなされなければなりません。 

売掛金回収、買掛金支払処理にも一対一対応の原則

お客様への売掛金で今月は5千万円の回収予定です。その内訳は請求書A、B、C、Dの合計額です。ところがお客様の資金繰り上、とりあえず3千万円入金されました。売掛金を回収してきたセールスマンは、どの請求書が回収されたのかわからないのです。とりあえず3千万円もらって満足しているのです。 

この3千万円は請求書A、B、C、Dのどれの回収かはっきりさせておく必要があるのです。コンピューターシステムの売掛金のプログラム上、一つ一つの請求書毎に3千万円を当てはめていく必要があるのです。こうしたことが発生しますと、売掛金担当の営業部の職員や経理経理職員に、余計な仕事をさせることになると同時に、お客様との関係にも悪影響を起こします。従ってセールスマンは一対一対応の原則に基づき、お客様にこの3千万円はどの請求その支払いなのか、はっきりさせておくことが必要なのです。 

お客様の仕入部門、買掛担当/経理担当も、どの請求書が支払われ、合計3千万円と明確にとらえていないのです。お客様も一対一対応の原則を守っていないのです。 

この一対一対応の原則は経営者自身が社内に伝え、管理していかなければならないのです。トップ自身が率先重範し、その姿勢を示し続けることが必要です。 

  1. 筋肉質の経営に徹する 

不要な在庫を処分する

製造メーカーの場合、棚卸資産として、原材料、製品、梱包材があります。これらの在庫を十分に管理していくのは経営トップの仕事です。営業、倉庫、製造部門に在庫管理を委ねていますと在庫は水膨れしていきます。 

在庫の水膨れは、在庫が増加するだけではなく、在庫となっているものの中には商品価値のないものもあります。また、在庫管理が不十分である場合、原材料の在庫が不足し、緊急に仕入をしないと、製造に支障をきたすことがよくあります。緊急に購入しますと、仕入価格も高く、運賃も高く、高価な仕入れになることがよくあります。 

また、お客様からの注文が100個ですが、150個製造したほうが製造コストが下り、原材料仕入単価も安くなるということもあります。ところがお客様から50個の追加注文がないかも知れません。そうしますと、50個分は滞留在庫として残り、商品価値がなくなることにもなります。こうした場合は50個分の棚卸資産評価はゼロとすべきです。滞留在庫の評価はあくまで正味実現可能価額を見積って評価計上すべきなのです。すなわち、売値見込額 - 一般管理販売費 - 目標利益 = 棚卸評価額とすべきなのです。 

リーダー自身が在庫の管理を徹底的に行う、不要なものは処分して行かなければならないのです。 

在庫管理の考え方は、固定資産の管理にも適用できます。不要な、使い道のない固定資産は処分していくことが必要です。使い道のない固定資産は場所もとりますし、工場の清掃作業の妨げになります。 

固定資産は経済耐用年数で

設備投資の減価償却はどの企業も税法に定められた耐用年数で償却するのが普通です。例えば金型は3年償却という具合です。お客様は同じ金型を使って3年間注文をしていただけるという前提なのです。ところが、異なった目的で、異なった製品を作る為の金型は、摩耗がはげしく3年も使用することは出来ないことがあります。1年しか使えない場合もあります。お客様からの注文が1回限りということもあるのです。ですから金型は、1年後には無価値の役立たない固定資産となります。そうした金型は1年で償却、または経費処理をしなくてはならないのです。 

ですから設備は経済的耐用年数で償却することが正しい会計処理になるわけです。 

当座買いを徹底する

原材料は荷造り梱包材の在庫はできるだけ持たないようにするのです。大量に仕入れますと、単価を安くしてもらえるので、1か月使用する原材料をその3倍の3か月分の仕入をするようなことがあります、まとめ買いをすることがあります。

お客様からの発注が3か月分確実にあるという保障はないのです。そうした場合のリスクを考えて、原材料はたとえ仕入価格が10%高くても1か月分だけ仕入れるようにする。まとめ買いはしないのです。 

必要なものは必要なときに当座買いをするという当座買いの原則を守ることが大切です。 

当座買いには、次のようなメリットがあるのです。

1)      長期滞留在庫を削減する

2)      余分の原材料を買わない為、原材料を一つずつ丁寧に使い、乱雑に取り扱わなくなります。原材料の消費を節約します。

3)      在庫が削減されますと、仕入費用や倉庫のスペース節減、保管費用が少なくなる、また月末の実施棚卸もより簡単になります。 

売掛金・買掛金を減らす

売掛金の回収は出来るだけ早くするように努力が必要です。営業はモノを売るだけではなく、売掛金の回収にも責任があるのです。売掛金の分は銀行から借り入れを積んでいますから、銀行に支払い金利が発生します。売掛金残高が膨らむと、支払い金利も大きくなります。 

買掛金も同じくなるべく早く支払うようにして、買掛金も減らしていく。買掛金が増えていけば、金利のかからない手持ちの資金が増えることになりますから、良いと考えられています。しかし買掛金の残高が増え、資金が増えますと、経営者は自分の会社の手持ち資金が増加したと勘違いします。また、買掛金の支払いを早くすることによって、仕入値を下げてもらえることがあります。 

投機をしない

投機はしません。額に汗して稼いだものしか利益としない。苦労せずに手に収めたものは利益ではないのです。ですから、株式などの投機的なことは一切しません。 

  1. 完璧主義の原則 

製造工程の途中でちょっとしたミスをすれば、その製品すべて不良品になってしまいます。管理部門、営業部門ではコンピューターや紙で仕事を処理していきますが、若干数字が間違っても指摘されればコンピューターの画面で訂正、または消しゴムで消し訂正することができます。そういう簡単に訂正できるようなミスを日常的に見過していたのでは、経営はできないのです。 

レストランでも出したお料理が、味がおかしかったり、塩からかったりしましたら、お客様から苦情が出て、やり直しになります。それは信用をなくすことになり、二度とそのお客様は来てくれなくなります。そのお客様は友人にまずい料理を出されたことを話します。1人のお客様を失えば10人のお客様を失うと考えるべきなのです。 

経理も営業も、モノ作りと同じように、ちょっとしたミスで全部がパアになってしまうのだという意識を持たなければなりません。つまり、完璧主義を貫いてもらうのです。常に有意注意で真剣に数字を見る習慣がついていますと、書類を見た時、すぐにおかしい、間違った数字がわかるのです。 

  1. ダブルチェックの原則

すべてのものはダブルチェックしなければなりません。ダブルチェックは経理のみならず、会社の中の人と組織の健全性を守る“保護メカニズム”です。 

ダブルチェックをすれば、会社の業績向上に貢献するだけではなく、人を罪に陥れるようなこともなくなるのです。これは、人に罪をつくらせないシステムなのです。 

入出金の場合、お金を扱う人と帳簿をつける人は別々の人にします。毎週、現金残高と帳簿残高を照合します。2人でお互いにチェックする形になるのです。 

会社の代表者印も同じくチェックがされるようになっています。

経理部長は代表者印を捺します。

経理部次長は代表者印の入った金庫のカギを持っています。

経理部長は金庫の中にある代表者印の入った箱のカギを持っています。

こうして3人が代表者印の管理に携わっています。二重三重のチェック体制をとるようにします。 

モノを仕入れる時もダブルチェックのシステムが有効です。たとえば製造担当者が設備を購入しようとした場合、製造担当者は上司の承認を受けた後、資材部に設備購入申請書を提出します。担当者が仕入業者と交渉したり、値段を決めたりはしないのです。設備購入申請書を受け取った資材部は、たくさんの業者とコンタクトをとり、見積もりをとります。そして、よくて一番安い業者に発注します。従って製造担当者が指定して来た業者から仕入れするかどうかは資材部が決定するのです。 

  1. キャッシュベース経営の原則 

”経営というものは難しく考える必要はありません。売上を最大に、経費を最小にするだけでいいのです。“ 

経営は現金預金に始まり、仕入、製造、販売、一般管理と使われ、最後に現金預金に帰結します。このように経営を見てみますと、経営の結果を現金の流れをしっかりと見ることによって、業績 - すなわち現金預金が年初と比べて年末にいくら増えたかを判断することができるのです。売上を最大にして色々な経費をできるだけ少なくすれば、業績は向上します。 

これは財務諸表(損益計算書、賃借対照表、資金繰り表、脚注)の中の資金繰り表としてキャッシュベース経営が表示されています。