盛和塾 読後感想文 第七十三号

高収益企業の作り方 

強い願望を持つことで、企業を高収益体質に導くことができます。塾生の中では、自分の会社も高収益企業にならねばならないと心から思い、その結果、営業利益率10%を超える企業が続出しています。株式公開や上場に至った会社は100を超えています。 

経営者が、我社は高収益企業になるのだ、と心から願い、誰にも負けない努力をすれば、いかなる業種においても高収益は実現できるのです、と塾長は述べています。 

筋肉質経営に徹する 

なぜ筋肉質経営が必要か

企業の体質は筋肉質でなければなりません。人間の体と同じくぶくぶくと太りすぎていたのでは健康によくありません。 

企業は永遠に発展し続けなければならない。その為には、企業を人間の体に例えながら、身体の隅々まで血が通い、つねに活性化されている引き締まった肉体を持つものにしなければならない。経営者は贅肉のない筋肉質の企業を目指すべきなのです。 

上場企業になりますと、どうしても会社をよく見られたいという意識が出てくる。高い株価を維持したい為に、利益をはじめ、すべてのものをよく見せたいと思うようになるのである。しかし見栄をはれば、贅肉ばかりがつき、不要な負担が増すばかりとなります。経営者が自分や企業を実力以上によく見せよういう誘惑に打ち克つ強い意志を持たなければなりません。 

企業の体質を表わす貸借対照表

貸借対照表は企業の資産・負債・資本をまとめたものです。 

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資産合計が多い企業は、沢山の資産を持っているだけに立派な会社であるかのように見えます。会社が少し大きくなりますと、りっぱな本社社屋をつくろうという誘惑にかられます。土地を買い、立派な外観の建物を作ります。そうしますと、資産合計金額は膨らみます。 

ではどうして、その資産を調達したのでしょうか。もし銀行から借り入れをして立派な本社をつくったとしますと、土地・建物の代金と同じ金額が短期借入金、又は長期借入金に計上されます。資産を増やしていきますと、負債・資本合計も増えていきます。 

スリムで筋肉質の経営とは、資産を少なくして、なるべく増やさないようにする経営です。資産を小さくしますと、負債・資本も少なくなります。小さい資産の会社だから弱い企業ではありません。 

企業の損益を表すものが損益計算書です。 

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売上高が多く、売上原価、一般管理販売費が少ない、利益が大きい。 貸借対照表では資産が少ない、負債が少ない、そういう会社が良いのです。

逆に売り上げの伸びもなく、経費も沢山使っている、利益もほんのわずか、資産の額は大きい、負債も多い、という企業は、逆に、よい会社とは言えません。健全とは言えないのです。

新品でなく中古品で我慢する

オフィス用の机、椅子、会議室のテーブル等、企業は事務用器具・家具が沢山必要です。その時は新品ではなく、新品の半額以下の中古品を購入するのです。大企業が不要になった什器備品が沢山、中古市場に出回っています。 

製造設備を購入する場合も、どうしても現場の技術者は新品の機械を買いたがるが、性能が優れた機械があっても、安易に買わず、中古品で我慢します。現在手許にある機械をいかに使いこなすかを徹底的に考え、創意工夫をこらすようにします。 

次のような分析をしてみるのも、一つのアイデアです。

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中古機械の方がコストははるかに少なくなっています。受注量が新品機械を年間通じて100%稼働させることが出来るのならば、新品機械購入は正しい経営判断と言えます。しかし生産性向上は新品機械導入により可能ですが、実際はそれがそのまま経営効率の向上につながるとは限らないのです。 

  1. 有形固定資産の導入時には損益計算書に留意せよ

新しい機械を見ますと、誰もが手に入れたいと考えます。しかし中古機械の価格の何倍もします。一方では生産効率が中古機械と比べますと、数倍も優れています。どうすべきか大変迷うと思います。 

新しい機械を購入しますと、貸借対照表の資産の部に計上されます。会社に現金預金が充分にある場合は、現金預金が減り、機械設備として固定資産が増加します。現金預金がその分だけ減少することになります。つまり資産合計は増えません。 

ところが充分な現金預金がない場合は、銀行から借り入れをして機械設備を導入します。負債の部に長期借入金が計上されます。資産の部に機械設備、負債の部に長期借入金と膨れ上がります。 

長期借入金には金利がかかってきます。機械を5年で償却しますと、減価償却費も取得価額の1/5となります。 

一方、少額の設備を購入した場合は、その設備を買うための借入金も少なく、金利も少ないし、減価償却費も少なくて済みます。 

とはいっても中古機械の生産性は、新しい機械のスピードの半分以下です。また、中古機械の場合は人件費も多くかかるはずです。減価償却費、金利、生産性、人件費等、損益も同時に考えることが必要なのです。 

本社ビルの建設も同じことです。業績がいいと、本社ビルを建てたいという見栄心が発生し、土地を購入し、本社建物を建設します。土地・建物、資産は増え銀行借入金も増えてしまうことがよくあります。こうした大きな投資は会社の損益に長期にわたり影響を及ぼすのです。 

  1. 減損会計導入で、より顕著になった筋肉質経営の優位勢

取得原価主義の会計が原則です、すなわち取得した時の価格が貸借対照表に計上されます。ところがバブルの時期に購入した土地は値下がりが激しく、市場評価額で査定し直すことになったのです。減損会計が導入されたのです。時価が原価より低い場合は、現在の価値に引き下げ損益計算書に損失を計上することになったのです。 

三洋電機も減損会計により一千億円の損失を計上しなければならなかったのです。 

資産の部は減損会計で減少しますが、借入金は不変です。資本の部の利益余剰金が損失の為に大巾に減少し、最悪の場合は繰越欠損が増えることになります。減損会計による損失の減損計上は利益余剰金、資本余剰金、資本金の合計より大きくなることもありました。債務超過といいます。

減損会計を先送りしている企業もあり、含み損がどんどん大きくなってしまうことがあります。ブクブクと膨れ上がった脂肪を取り除くことになった途端に、たちまち体力がもたなくなり、危機的状況になってしまうのです。 

  1. 経営体質の違いで明暗が分かれたイトーヨーカ堂とダイエー

イトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんは、スーパーを全国展開していく時、自分で土地を買って建物を作り、店を出していくというやり方をとられませんでした。イトーヨーカ堂は賃貸方式で出店していきました。 

ダイエーの中内功さんは賃貸方式では家賃が発生する。自分には信用があるから、銀行借入により土地を入手し、建物を建設するというやり方をしたのでした。貸借対照表上の土地建物は10年後には値上がりも期待できる。しかもリースと違い、レント代も支払う必要がないと考えたのです。 

一目しますと、ダイエーの中内功さんの方がイトーヨーカ堂の伊藤雅俊さんよりはるかに賢いように見えます。 

イトーヨーカ堂に賃貸する会社は、土地を買い、建物を建設し、銀行借り入れをし、利息を支払っても利益が出るから賃貸しているのです。イトーヨーカ堂は賃貸会社の減価償却、金利等の経費と、賃貸会社の利益 = レント代を支払っているのです。この利益はイトーヨーカ堂の手元には残らないのです。 

ダイエーは資産が肥大化し、借入金も増え、負債も肥大化していったのです。金利負担が重くのしかかり、デフレになり、土地・建物の価値が下がります。ダイエーの業務は大変悪化したのです。 

貸借対照表を見て、筋肉質の経営をしていくことの大切さは歴然としています。 

健全会計に徹する“セラミック石ころ”論

京セラのセラミック部品は、受注生産品です。テレビ用の絶縁部品にこういう計上の絶縁部品が欲しいと言われて、客先の要望に応じてセラミック部品を作ります。客先がテレビ用の絶縁部品を作ることを依頼して来た時、そのセラミック部品は売却され、価値があるのです。もうほかのタイプのものに手直しすることはできない、お客様使用の部品なのです。 

客先から2千個のセラミック部品の発注があった。しかしひょっとしたら追加があるかも知れない。追加で500個くらいは作って、在庫として保存していこうということになった。しかし、この500個は通常単価100円ですが、発注がお客様から来ないかも知れません。捨てるにしてはもったいない。評価はゼロにしようとします。しかし税務署は、評価ゼロとするのであるならば、捨てなくてはならない。捨てない500個分は、製造原価で評価すべしと主張します。 

経営上、資産とは価値を生み出すことのできるものなのです。上記500個分が売れるかどうか分からない場合は、保守主義の考え方から、評価はゼロとすべきなのです。 

こうした資産が工場の倉庫の中に蓄積していくことが多々あります。これがタブタブの、ぜい肉のついた貸借対照表となってしまうのです。ですから、経営者は棚卸を人にまかさず、自分の目で見て、自分の手で触れて行うべきものなのです。自分も一緒になって検品をし、こまめに見て回るようにすべきものです。 

  1. 確固たる経営哲学がなければ、貸借対照表のスリム化はできない

資産の部にある流動資産、固定資産が減れば、減った分だけ資本の部の利益余剰金が減ってしまいます。 

長期滞留の材料があったり、不良品があったり、それらが棚卸資産として計上されていることがよくあります。これらの不良在庫は将来利益をもたらすことはありません。すなわち資産としては、貸借対照表に計上してはならないものです。これらの不良在庫を帳簿から落としてしまえば、利益はその分だけ減ります。 

筋肉質の経営というのは、棚卸資産も徹底的に落とし、資産合計を少なくする経営です。経営者の中には、会社は銀行借入があるので、損失を今期計上するわけにはいかない、棚卸資産の評価減は、今年はやめておこう、利益が大きく出た時に損金に落とせばよい、と考えてしまうのです。こういうことが何年も続き、ますます業績が悪化していきます。 

株式公開している会社では、株主に会社を立派に見せたり、自分の経営者としての手腕をよくみせたいという気持ちがどうしてもあります。 

貸借対照表をスリムにしていく為には、こうした外部からの圧力・見栄で経営するのではなく、確固たる経営哲学を持っていなければ出来ないのです。 

固定費の増加を警戒する

固定費は売上や製造量の規模にかかわらず変動せず、時の経過と共に発生するものです。一方変動費は売上や製造数量に応じて変動するものです。固定費の主なものは固定資産に関わる減価償却費、人件費も大きな項目です。設備投資が増えれば減価償却費は増えます。人数も増えれば人件費も増えます。間接部門での人員はいつのまにか増えているということになりやすいのです。 

筋肉質の経営には、原材料等の操業費に連動する変動費を下げるだけではなく、固定費も一定ぐあい下げていくことにより、利益を高めていくということが大切です。 

会社の経営が損益分岐点(売上 – 売上原価 - 一般管理販売費 = ゼロ)となる売上高をできるだけ下げていく、その結果として利益を増加していくことが筋肉質の目標です。

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新しい機械設備を購入しますと、固定費(減価償却費 + 利子)が増えます。生産性は向上しますが、しかし生産性を向上する為には、大幅な売上拡大が必要なのです。確かに大量の受注を受けても新しい機械設備を使えば短期間に生産が達成されます。製品一個当りの製造時間が短縮され、このメリットは売上増があるという前提なのです。 

固定費が増加しますと、損益分岐点はどんどん高くなり、ますます売上増が要求されます。固定費が一定ですと、売上増と変動費増の差額が利益増となります。 

固定費を低くして、変動費もできるだけおさえていきますと、売上増は直ちに利益増に結びつきます。 

こうした経理の基本は経理担当者は理解しておられます。問題は社長が理解していないことがよくあるのです。積極経営でどんどん設備投資をしようとする社長には、上記のように固定費の増加が利益を圧迫していくのだということを頭で理解していても、競争相手のやっていることや、景気動向をもとに、新しい機械設備を購入したり、本社社屋を建設したりすることがあるのです。 

投機は行わない 額に汗した利益が大切

投資とは、自らの額に汗を流して働いて利益を得ることであって、苦労せずに利益を収めようとすることではない。事業経営はバクチではありません。 

都銀の行員が“不動産が値上がりしています。みなさん土地を買って転売して儲けておられます。御社は利益が上がった分、当行に預金をしていただいて、それはありがたいことです。世間では金を借りてでも土地を買っておられます。御社にはいくらでもお貸しします。値上り確実な不動産もたくさんありますので、是非紹介させていただきたいのですが”塾長に言ったそうです。この話は“自分で汗を流して稼いだものしか利益ではない”とお伝えして終りにしたと塾長は述べています。 

世の中の動きにあおり立てられると、それに逆って自分の意思を貫くということは難しいことかも知れません。多くの社員に対して責任を負う経営者は、他人を見てその真似をするのではなく、あくまでも自分の中にある原理原則や行動の規範に従うべきである。時勢に付和雷同し、流されてはいけません。 

西郷南洲は遺訓二十五.で語っています。 人を相手にしないで、常に天を相手にするよう心がけよ。天を相手にして自分の誠を尽し、決して人の非をとがめるようなことをせず、自分の真心の足らないことを反省せよ。 

バブル景気の機、投機に走った人達が、バブルがはじけて大損をしました。その時、当事者は投機をすすめた人達を非難しました。自分の中にある原理原則や行動の規範を大切にすべきだったのですが、他人の意見や世の中の動きにつられて、間違った行動を執ってしまったのです。

投機的利益というのは、自分の本業とは関係のないところであげる利益です。損益計算書でいいますと、営業外利益のことです。 

予算制度は合理的か 当座買いの精神

来年度の事業計画を立てる場合、例えば売上20%増しにしよう。そうしますと人員も20%増し、経費も20%増しといった事業予算が作られることがあります。

しかし、実際には、売上は20%も増加しません。肝心の売上が計画通りに増えないことが多いからです。売上が増えないかと尋ねると“頑張っているのですが、今は不況でなかなかうまくいきません。現状を挽回するためには、さらに思い切って人員を増やす必要があります”と経費が先行していくことが多いのです。売上だけが計画通りに増えないということを肝に命じておく必要があります。 

使うほうの予算だけは順守され、入ってくる方の売上は期待通りには増えない。これが予算制度の実態です。 

従って、予算制度に基づいて経費を使うのではなく、原材料の購買について、毎月必要なものは毎月必要な分だけ購入する。お酒でいうなら一斗ではなく一升だけ買う。自分が今日飲む分だけ購入する。一斗買えば、一生買うよりも安いですが、余分なものは買わない。身軽になっておくのです。 

使う分だけを当座買いするから、高く買ったように見えるが、社員はあるものを大切に使うようになる。余分にないから倉庫も要らない。倉庫が要らないから在庫管理も要らないし、在庫金利もかからない。これらのTotal Cost(全部原価)を計算すると、その方がはるかに経済的なのです。 

  1. 人間の心理にかなった“当座買い”

“一升買い”は、もともとお金がないものだから、お酒でも醤油でも一升しか買えない貧乏人の生活態度を表わしたものです。 

例えば、お寿司屋さんでお刺身を食べる時、白人のお客様は、さしみ醤油皿に満杯にお醤油を入れて、刺身を泳がせて食べているのを良く見ます。テーブルにお醤油の小瓶が置いてあるものですから、余ろうがどうか全く感知しませんし、又、お醤油はタダです。人間の心理とはおかしなものです。つまり無駄遣いをしているのです。 

“多く買えば安くなるものを必要な分だけしか買うなといって、わざわざ高い値で少しだけ買う。なんでそんなバカなことをいうのですか”と反論する人もあると思います。

しかし、先述のように、Total Cost(全部原価)を考える、仕事の全体の流れを考えますと、目の前にある原材料の単価を比較するだけでは充分ではないのです。 

  1. 材料仕入から製品出荷までのよどみない美しい流れを

材料を使った場合には、その分製品となって出て行くというスムーズな流れにしますと、経営状態が即座にわかります。使った材料はすべて経費に落とす。そうして製品は同時に出荷され、売上に計上される。滞留在庫は少なく、すべての製品が出荷され、売上に計上されるというシステムですと、製品棚卸残も少なくなるのです。 

  1. 当座買いは棚卸資産を圧縮する

使う分だけしか買わないですから、貸借対照表の資産の部にある棚卸資産も抑えることができます。当座買いをしますと、原材料在庫も少なくて済みますから、棚卸資産も少なくて済みます。それだけではなく、不良在庫とか長期滞留の原材料も少ないか、又は一切発生しないのです。 

“当座買いの原則”は筋肉質の経営を実現するために大事な原則です。