盛和塾 読後感想文 第五十一号

企業統治、トップが倫理を 

どの歴史を見ても、国であり、企業であり、その盛衰はリーダーで決まる。経営者の行動により、企業の繁栄や従業員の運命も決まります。 

雪印乳業、日本ハム、三井物産、東京電力などの不祥事が発生していますが、日本の企業のリーダーのあり方が厳しく問われています。ある都銀の会長が、暴力団との関係の責任を執り、傷ましい自殺をしたと報道されていました。この会長は、有名な経済誌にたびたび登場し、経営のあり方について意見を述べるほど、著名人でした。 

アメリカでも、経理操作をした通信大手のワールドコムが破綻しました。 

企業統治の危機、経済社会への不信感を招いた原因は、トップの倫理観の誤りが直接の原因です。それは経営の倫理観を失わせ、不正に走らせた経営システムにその原因があると思われます。企業統治の危機回避には、法律や高度な管理システムが急務といわれています。 

しかし、経営の意志決定はトップの手中にあり、会社の内部統制システムはトップの手中にあるのです。トップの意志決定により、内部統制システムは容易にくつがえさせられてしまうのです。 

西郷隆盛が言うように、高い地位に就くのは人格者であり、素晴しい業績を上げたものの労苦には金銭で報いるべきだ。

多くの人々を率いるリーダーは、私欲のためではなく、使命感をもって集団のために自己犠牲をもいとわない高潔な人格を持っていなければなりません。リーダーに必要なのは“人間としての正しい生き方”を繰り返し学び、常に理性でもって自分をコントロールすることなのです。 

“うそは言わない。” “正直であれ。”という倫理観をリーダーは持ち、持ち続ける努力を惜しまず、その倫理観を従業員に守らせることが大切なのです。 

稲盛塾長は上記のように平成14年(2002年)10月29日付日経新聞で語っています。

 

盛和塾で学ぶこと 

盛和塾では “人生はいかに生きるべきか。”ということを学ぶことを目的としています。この学びを各経営者が自分の会社で実践することです。 

心を判断基準にする 

会社設立当初は、経営の経験のない塾長は、経営判断の基準をどこに求めるかということを一番心がけました。いろいろな案件に対して、良し悪しを直ちに判断することが要求されました。その時判断基準を考えるのに一番大事なことは、その人の “心” を基準とすることではないかと考えました。 

“心” は魂から生まれて来ます。子供の頃、両親や学校の先生に教えられた “やって良いこと悪いこと” を判断基準にして来ました。魂から発現した判断基準を経営の判断基準にしてきました。そのことは “人間として何が正しいのか。” ということでした。 

盛和塾でいかに学ぶか 

盛和塾では“心”について学びますが、大事なことはそれを聞くだけではなく、反復して学び、自分の生き方を反省し、自分の生活の中で、実践応用していくことです。 

  1. 自分の学んだことを生活の中で生かし、反省する 

一度学んだからそれで終りというのではありません。教わったことを反復しながら、常に思い出し、実践し、反省していくのです。 

優れた先人 - 稲盛和夫塾長や松下幸之助さんの言われたこと、書かれたことを何度も読み返し、自分で自分に言い聞かせることを続けるのです。沢山の本を読むよりも、こうしたすぐれた人格、高潔な人の書かれた本に集中して、毎日読み続けることが大事なのです。こうすることによって、限られた時間で最も効率良く学ぶことが出来るのです。 

昨今の経済界の不祥事の責任者、トップは、もともと立派な人達でした。しかし頂点を手にした為に、毎日の学びを怠り、反省を忘れ、傲慢になり、自分は他から学ぶべきものはないと考えだし、不祥事を起こし、没落していったのです。立派な人でも知らず知らずのうちに変質してしまうのです。盛和塾で学んだことを、反省を重ねて繰り返し繰り返し学び続けるということが必要不可欠だと塾長は語っています。 

  1. 志を同じくする人と互いに研鐟していくことです

朱に交われば赤くなる。立派な生き方を追求したいという同志が集まると切磋琢磨が起こります。 

人材は群生するのです。人間は社会的な動物です。1人では成長することは出来ないのです。 

  1. 我が師を持つ 

我が師を持つことが出来れば、自分を素直にし、自分を修正していくことが出来ます。注意を受け、叱られるという経験を素直に受け止めることで、成長する機会を得るのです。 

経営者の条件 

  1. 強烈な願望を抱く 

企業経営者は多くの従業員、または自分の家族の生活を預かっています。その人達の為に、自分の会社を立派なものにしていきたいという強い願望を持たなければならない。 

経営者は会社の将来の進むべき道 - 願望を持たなければならないのですが、その願望は寝ても覚めても思わなければなりません。 

過酷な生存競争を生き伸びていくためには、厳しい/激しい格闘技に勝る闘魂がいります。 

経営者は誰にも負けない努力をし、真剣に人生を生きようとすること、自分の家族や従業員を含めて幸せにしてあげようとすること、強烈な願望を持ち続けなければなりません。 

  1. 地味な努力を積み重ねる 

経営上での雄大な構想や斬新な発想は、突然思いつくものではないのです。会社を立派にしたいという凄まじい願望が創造的な発想を生んでいくのです。企業をとりまく環境や業種など、人材不足、経験不足、資金不足等、種々な条件を理由に創造的な発想が浮かばないということを良く聞きます。それは、その経営者がド真剣に生きるか死ぬかと物事を考えていないからなのです。 

例えば、技術開発が進み、当社の製品の需要が無くなるという事態に直面したとします。凄まじい危機感が高まってきます。発想の転換どころではありません。必ず現状を打破するような斬新な発想というものが生まれて来ます。何とかしたいという必死の思いが、真にクリエイティブな発想を生み出すのです。 

どんな偉大なことも、本当に地味な一歩一歩の積み上げでしか成し得ないのです。地味な一歩一歩の積み上げではなく、もっと楽ないい方法がないかと思い、時間を、お金を無駄に使い、大変な危機に対応出来ないことになります。経営に近道はないのです。 

物を売るにしても、作るにしても、地味な仕事で構わないのです。コツコツと売上を伸ばしていく、地味な仕事を綿々と続けていくうちに、幾何級数的に拡大していき、創造的な構想が生まれ、大きなビジネスへと成長していきます。 

  1. 常に謙虚である 

二代目社長が就任しますと、最初のうちは“私はわかりません”“色々と教えて下さい”と謙虚にふるまいます。ところが、周囲からチヤホヤされると、自分には力があると過信してしまい、努力をしなくなり、人の意見に耳を貸さなくなり、傲慢になってしまうことが多々あります。 

そうしますと経営判断を間違い、不祥事を起こしたり、人格が変質してしまいます。 

創業者ですら、一生懸命働き成功した後、傲慢になり、堕落し、没落することをよく見かけます。 

いつも“人間として何が正しいのか。” “私心なかりしか。” という基準を持ち、理性でもって、経営に携わっていくべきです。毎日の反省、謙虚さは大事なことです。 

本田宗一郎に学ぶ 

謙虚さを考える時、本田宗一郎さんを思い出しました。世界的な本田技研工業というすばらしい自動車メーカーを作られた本田宗一郎さんは、会社がうまくいくと自分の出る幕はないと判断され、自分の子供にも跡を継がさないで、見事に身を引かれました。亡くなられた後も、盛大な葬式もされませんでした。 

本田宗一郎さんのセミナーに参加した時、本田宗一郎さんは工場・仕事場から会場にかけつけて、仕事着のまま演壇に立ち、言われたそうです。

“皆さんは何しに来たのか。大体温泉に入って浴衣を着て経営なんて学べるわけがない。他人の話が経営のプラスになどならない証拠に、私は誰にも経営について教わっていない。少しでも暇があったら会社に帰って仕事に励んだほうがまだましだ。” 

本田宗一郎さんの本音の話は、彼の実体験から出たものです。こうした人を引き付けるような人からとことん考えを吸収して見ることが大事です。 

生き方を学ぶ 

本田宗一郎さんは従業員に大変厳しい経営者でした。いい加減な仕事をしている従業員を見つけると、真剣に怒り、スパナやハンマーを投げつけたそうです。 

一方では浜松の芸者を呼んで、ドンチャン騒ぎをする。仕事も一生懸命なら、遊びも一生懸命でした。後日、若気のいたりで飲んでドンチャン騒ぎをやったけれども、そういうものが本当の人生ではないことを悟ったのです。成功されるに従って、本田宗一郎さんは謙虚になりました。自分が身を引く時、子供には跡を継がせない、右腕だった副社長の藤澤武夫さんと一緒にきれいに身を引かれたのでした。社葬もいらないと言ったそうです。 

凄まじい闘魂を持つ 

本田宗一郎さんのように、家族のため、従業員のため、素晴しい会社にすることを目的として、誰にも負けない根性と執念で経営にあたるべきですと塾長は語っています。凄まじい闘魂が必要なのですが、しかしもし自分の心をコントロールすることが出来なければ、方向を誤り、破滅に向ってしまいます。 

“会社をこうしたい。” “仕事をこうしたい。” と強い想いが大事です。創造的な発想は、この強い想いが源泉なのです。第三者から創造的な発想を学ぶことは出来ないのです。 

自分には創造性がない、能力、頭が悪いと思ったら、それを自覚して必死に一生懸命にやれば必ず成功できるのです。大切なことは、強烈な願望があるかないかということです。 

燃えるような闘魂があり、“何としても会社をよくしていきたい。” という思いが強い人こそ、“人間として何が正しいか。” という哲学を学ぶことが大切です。“燃えるような闘魂” を持ち続け “人間として何が正しいか。” という哲学を学び続けることができれば、その成功を持続することができるのです。 

志を持って自分の心を高める 

盛和塾は、会社を成功させ、それを長く持続させるための原理原則を教わる場所です。成功したい野心をもち、もう一方では生きていることに感謝する、素晴しい考え方を自分のものとしなければなりません。 

ただ一回しかない人生を、素晴しい仕事を通じて、家族や従業員はもちろん、社会のため、世界のため、地球のためになるよう、それぞれの立場で努力するのです。 

経営のための会計学を学ぶ 

経営者は経理が判っていないと会社経営は出来ません。経営のための実践会計原則です。 

経営管理の一つ、実践会計原則にはいくつかのキーポイントがあります。 

  1. 一対一対応の原則

あらゆる取引には必ずその取引を明確にする記録(紙又は電子)が必要です。例えば入金があった場合は、どの売掛金請求書のものか明示されなければなりません。 

  1. ダブルチェックの原則

あらゆる取引は少なくとも2人の異なった人が正確さや誤りがないか、チェックし合います。 

  1. 完全主義の原則

会計の数字は正しいものでなくてはなりません。 

  1. 筋肉質経営の原則

将来使う見込みのないものは処分し、余分なものは一切買わない。無駄な資産は保有しない。 

  1. 採算向上の原則

売上を最大に経費を最小に努める。内部の経費を節約することによって、利益を生み出す。 

  1. 現金主義の原則

決算書を見る時、賃借対照表、損益計算書を見るだけではなく、現金資金計算書も充分検討し、現金の流れを絶えずチェックする。 

  1. ガラス張りの原則

全ての会計経営情報は、全従業員に公開されていなければならない。やましい経理処理は許されない。 

  1. 保守主義の原則

できるだけ売上は保守的に計上する。本当に得意先が支払ってくれるもののみを売上とする。経費はできるだけ保守的に記録計上する。その原因が現在発生していると思われる場合は、発生するであろう将来の経費は直ちに計上する。 

  1. 迅速会計の原則

会計処理は取引発生時に同時に経理処理する。取引記録のコンピューターへの入力は、取引と同時になされなければならない。 

 

経営者の意思決定により、人や物が動き、会計・経理情報が生まれます。経営者のこうした経営判断が、売上・経費のどの科目に反映されるのか、知っておく必要があります。 

常に脱線しそうな人間が “何が正しいのか” と問い続けながら、日々反省を繰り返していくと、運命までも好転し、人生 – 仕事に成功することができるのです。