盛和塾 読後感想文 第118号

経営十二ヶ条

  1. 事業の目的意義を明確にする

  公明正大で大義名分のある高い目標を立てる

  1. 具体的な目標を立てる

  立てた目標は常に社員と共有する

  1. 強烈な願望を心に抱く

  潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望持つ事

  1. 誰にも負けない努力をする

  地道な仕事を一歩一歩堅実にたゆまぬ努力を続ける 

経営十二ヶ条 

純粋な心から始めた事業は必ず成功する

事業を興そう、または今の会社のなかで、仕事を始めようと思い立ったとき、それは人々にとって、世の中、社会にとってどういう意義があるのかということを考えてみる必要があります。 

世のため人のために尽すことが、人間として生きていく最大の目的だと思います。そういう目的に合致するような事業、仕事であった場合には、使命を燃やし、強い意志力でそれをやりさえすれば、困難に見えることでも十分に成し遂げることができます。 

仕事をするとき、自分の知性、つまり頭で考える、そして心で“こうしよう”と“ああしよう”と思いながら企画し計画を立てています。しかし、頭で考え、計画を立てていく、心で描いているだけでは不十分なのです。個人的な、利己的な考えに基づくのではなく、利他の心、世のために尽そうと思った考えたことを、凄まじいばかりの情熱を燃やしながら、強い意志力で展開していけば、必ず成就するのです。“なるほど、それはすばらしい計画だ”と考えて、周りの人々が支援してくれるような崇高な計画でなければなりません。 

宇宙の森羅万象を成り立たせている根源的なものが、我々人間の心の奥底にあります。その基本的なものがある為、我々は宇宙と調和して生き長らえて来たのです。その基本的なものとは、心の中にある“真我”あるいは“魂”というものです。その魂が宇宙と調和して感応し、宇宙と波長が合った時、宇宙は我々を支えてくれ、どんな難しいことでも解決することができるそうです。 

“あんな難しいこと”と思っている時でも、簡単に成就できるのです。なぜあの人はあんなにも簡単に、ある難しいことを成功させることができたのだろうと誰もが思うくらいに簡単にできる、知性でいくら考えても難しいこと、出来そうにもないことでも、自分の心の奥底にある真我が宇宙と連携が取れるようになれば、天が支援してくれるそうです。天の助けが借りられるような人間性を高めていけば、どんな難しい問題でも必ず解決できるそうです。 

美しい心を持った人は、その人自身の力だけではなくて、宇宙を味方にして全てのものがうまくいくようになっている、それが自然界の法則なのです。 

経営十二ヶ条の力を信じて実践する

世の中の複雑に見える現象も、それを動かしている原理を解き明かすことができれば、実際には単純明快なものです。経営といいますと、複雑な要素が絡み合う、とかく難しいものだと考えられます。しかし、経営の本質に目を向けますと、経営はシンプルなものであり、要諦さえ会得することができれば、決して難しいものではないのです。 

京セラの経営十二ヶ条は“人間として何が正しいか”という、基本的で普遍的な判断基準によって作成されました。業績、企業規模の違い、文化、言語の違いまでも超えて必ずや通じていくものです。

一.事業の目的・意義を明確にする-公明正大で大義名分のある高い目的を立てる 

  1. 全従業員の物心両面の幸福 

なぜ、この事業を行うのか““なぜこの会社が存在するのか”様々なケースがあります。まずは自分の事業の目的、または意義を明確にすることが必要です。金儲けをしたいから、事業を始めたという人がほとんどだと思います。しかし、それだけでは多くの従業員を糾合することは難しくなると思います。事業の目的、意義はなるべく次元の高いものであるべきです。公明正大な目的でなければなりません。 

従業員に懸命に働いてもらうためには、仕事が従業員の為にあること、自分達の生活が良くなっていくこと、従業員の家族が幸せになっていくことに直結していることが必要なのです。そしてその仕事が“大義名分”のあるもの、“自分はこの崇高な目的のために働くのだ”というものがあれば、人間は一生懸命になるのです。 

京セラ創業時には、稲盛塾長は新しくつくる会社では誰に遠慮することなく、自分の開発したファインセラミック技術を世に問うこと、世の中に認めてもらい、京セラの発展が事業目的と考えていました。“技術者として、自分の技術を世の中に認めてもらいたい”と考えていました。 

しかし、創業三年目、若い従業員たちの反乱に遭遇したのでした。創立二年目に採用した高校を卒業した十名ほどの従業員が団体交渉を申し入れて来たのです。提出された書類には、“将来にわたって昇給は最低いくらほしい”“ボーナスはいくら出すこと”と自分達の待遇保証を求める要求事項が連ねられていたのです。“将来を保証してもらわなければ我々は会社を辞めたい”。 

会社としては、ようやく戦力となって活躍してくれ始めた十名の従業員ですから、辞められたら大変困るわけです。しかし、“彼等が要求に固執するようであればやむを得ない。創業時に戻り、やり直せばよい”と考え、“要求は受け入れられない”と答えました。できる自信も見込みもないことを保証することは、嘘をつくことになる。 

話し合いは、稲盛塾長の自宅にまで及び、三日三晩続いたのでした。“私は命を懸けてこの会社を守っていくし、みなさんを守っていくつもりだ。もし私がいい加減な経営をし、私利私欲のために働くようなことがあったならば、私を殺してもいい”。 

彼等は要求を撤回し、会社に残ってくれることになりました。そして以前にも増して、骨身を惜しまず働いてくれるようになりました。このときの造反メンバーは、その後幹部として京セラ発展の一翼を担っていくようになります。 

その時、稲盛塾長は次男坊として、稲盛家の親・兄弟、妹達に毎月仕送りをしていました。郷里に住む親兄弟の面倒も見なければならないのに、どうして赤の他人の採用したばかりの従業員の将来の保証までしなければならないのかとも考えたのです。 

この事件によって、従業員は家族までも含めた将来の保証を求めているということを、心底から知らされたのです。企業を経営するというのは、技術者の夢を実現するということではなく、ましてや経営者自身の私服を肥やすことでもなく、従業員やその家族の生活を守っていくことにあると悟りました。 

経営とは、経営者が持てる全能力を傾け、従業員が物心両面で幸福になれるよう最善を尽くすことであり、企業は経営者の私心を離れた大義名分を持たなければならないという教訓を得ました。 

公明正大な大義名分、事業の目的や意義があってこそ、従業員の心からの共感を勝ち取ることができ、全面的な協力を得ることができるのです。経営者自身も堂々と、経営に全力投球が出来るようになるのです。 

  1. “地球環境への貢献”-太陽光発電事業のミッション 

京セラの太陽光発電事業のミッション、大義名分は、エネルギー問題や地球環境問題に貢献することです。化石エネルギー使用量を削減し、温室効果ガスの排出量を減らさなければ、地球温暖化に歯止めをかけることはできません。人類に必要なエネルギーを確保し、大切な地球環境を守りながら、人類の持続的発展を図っていかなければなりません。 

京セラでは毎年赤字が続く中で、執念を持ち、強い意志を持って事業を存続することができました。京セラのソーラーエネルギー部門は、現在充分な利益を確保しつつ、事業を拡大し続けています。徹底したコストダウンによって京セラは競争力を維持し続けています。他社が追随できないような取り組みを可能にしたのも、大義名分に基づいた強い使命感によって、従業員が必死の努力を払ってくれた結果なのです。 

  1. KDDIの成功-国民のために電気通信料金を安くしたい 

1980年半ばに通信事業が自由化されました。電電公社に対抗しうる日本の大企業が新会社を作り、競争して、なんとか通信料金を安くしてくれないかと、誰もが思っていました。 

京セラの第二電電は“国民のために通信料金を安価にしたい”という純粋な思いから生まれた企業です。“国民のために通信料金を安くしようではないか。そんな高邁なプロジェクトに参画することは、皆さんの人生を意義あるものにするはずです。この一大社会改革が行われる瞬間に居合わせた幸福に感謝し、何としてもこの壮大な計画をやり遂げていこう。それは社会のため、国民のためになることなのだ”と稲盛塾長は従業員に訴えました。 

国民国有鉄道を中心にした日本テレコム、トヨタ自動車を中心にした日本高速通信も参画してきました。しかし、これらの会社は損益勘定によって電気通信事業への参画を決めたのではないかと思われます。 

サービス開始から最も不利であった第二電電が市場を圧倒的にリードしていきました。それは大義名分、使命、ビジョンがあり、それを元にして第二電電の従業員が強い熱意で回線確保に尽力してくれたからです。すばらしい大義名分、すばらしい使命感に満ちた行為に対して、天が賛同し、それを助けてくれたと考えられます。 

国鉄の日本テレコムは売却されてしまいました。トヨタグループの日本高速通信は現在ではKDDI(第二電電)に吸収されています。 

技術もあり、資金もあり、信用があり、営業力のある、すべての条件が揃っていたはずの二社がうまくいかず、安価な通信料金を実現し、国民に喜んでもらおうという大義名分を持っていた第二電電だけが成功したのです。 

  1. 日本航空再建の原動力となった“大義” 

日本航空再建の大義名分は:

  • 日本経済への影響
  • 日本航空に残された従業員を守ること
  • 利用者、国民のため、航空事業における競争原理を守ること 

この三つの大義名分を日本航空社員が理解してくれるように努めたのでした。社員たちは日本航空の再建は自分達のためだけではなく、日本の経済のため、そして国民のためにという大義名分があるのだと理解し、再建への努力を惜しまなかったのです。 

日本航空という会社の目的は、全社員の物心両面の幸福を追求すること、と謳ったことで、社員達は大いに勇気づけられたそうです。“日本航空は我々の会社だ。そうであるなら、必死になって会社を守り立派にしていこう”と再建を自分のこととして捉えてくれるようになりました。

二.具体的な目標を立てる-立てた目標は常に社員と共有する 

経営者はその組織が何を目指すのかというビジョン、目標を高く掲げ、それを集団に指し示していかなければならないのです。組織をどういう方向に導いていくのかという方針を示し、進んでいく先にはどのような未来があるのかという展望を描き、さらにその実現に至る具体的な方策まで指し示し、人々を導いていくことが経営者には求められるのです。

三.強烈な願望を心に抱く-洗剤意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと 

心に描いた通りに物事は成就する。“何としても目標を達成したい”という願望をどれくらい強く持つことができるのかどうかが成功の鍵になります。強烈な願望-潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つことが大切なのです。 

たとえば、“売上をいくらにしたい”、“利益をいくらにしたい”という目標を立て、朝から晩まで四六時中考えるようにする。すると、そのような強く持続した願望はその人の潜在意識に入っていきます。 

繰り返し繰り返し、強く思い続けることが必要です。全身全霊をあげて、顕在意識を働かせる過程が必要なのです。案件を軽く受け流し、適当に処理しているような状態では決してそれは潜在意識にまで浸透していません。炎のように燃える願望を持ち続けることでしか、潜在意識を活用することはできないのです。

四.誰にも負けない努力をする-地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける

成功への道には近道はありません。 

  1. 百メートル走の全力疾走でフルマラソンを駆け抜ける 

京セラの努力は並大抵の努力ではありません。“誰にも負けない”ということが肝心です。京セラ創業時は、自前の資金も、満足な設備も、経営の実績も経験もありません。自分達の努力だけは無尽蔵でした。夜を日に継いで、昼夜を分かたず仕事に励みました。 

従業員には、京セラはマラソンに参加していると、稲盛塾長は語りました。長丁場のレースなのです。“京セラはマラソンレースに出場した素人集団のようなものです。それも業界の後発だから、遅れてスタートを切ったことになる。すでに先発の大企業は、先頭集団を形成してコースも半ばに差し掛かろうとしている。経験も技術もない、素人ランナーが半周遅れで、普通に走り出しても勝負になるわけがない。ならば、京セラは最初から全力疾走で走ってみよう。” 

“そんな無鉄砲なことでは、体がもつはずがない。その通りかもしれません。しかし素人ランナーが普通のペースでゆっくり走ってみても、先頭集団ははるか先にいる。勝負にならないどころか、ますます距離を離されてしまうだけだ。たとえ短い時間であっても、全力で走り勝負を挑んでみたい” 

このように従業員を説得し、京セラは創業以来全力疾走を続けてきたのでした。京セラは留まることを知らず、発展に発展を重ねていったのです。 

1971年に株式上場を果しました。稲盛塾長はその時、次のように全従業員に話ました。“百メートルのスピードでマラソンを走ったのでは、途中で倒れたり、落伍するだろうと皆さんも私もそう思っていた。けれども、勝ち目のない勝負をするよりは、短い時間でもいいから全力で勝負に挑みたいと思って走り始めたところが、いつの間にか、それが習い性になってそのスピードを持続しながらこんにちまで走り続けることができた。” 

“すると、いつの間にか、先を行くランナーたちがそれほど速く走っていないことに気がつき始めた。先頭集団の後ろ姿が見えてきたからだ。そこで我々はスピードを増し、一生懸命に走った。現在では第二集団を抜き去り、先頭集団を視野に捉えている。さあこの調子で先頭集団を追いかけようではないか” 

  1. 地味な努力の積み重ねが偉大な成果をもたらす 

企業経営は競争です。皇后企業が自分達以上の努力をすれば、中途半端な努力では功を奏さず、企業は競争に敗れて衰退していかざるを得ません。 

“私なりに努力をしています”という程度では、会社は伸びていきません。“誰にも負けない努力”がなければならないのです。偉大な仕事も地味な一歩一歩の弛(たゆ)まぬ努力の積み重ねからできているということを、決して忘れてはならないのです。 

1個9円にしかならない安価な製品を、それも大手電機メーカーの下請けとして、ただ一生懸命に作ったとしても、会社が発展するはずがない。そういう風についつい思いがちです。大企業となり、現在も成長・発展を続けている企業の歴史をひもとくならば、必ずそのような小さな事業を積み重ねながら創意工夫を重ね、地味な努力を弛(たゆ)まず続けてきたという事実を見出すはずです。 

誰にも負けない努力を一年三百六十五日、営々と続けていく日々は、必ず会社を想像もできない偉大な企業にしてくれるはずです。