盛和塾 読後感想文 第五十三号

心をベースとして経営する 

会社の発展のために、従業員の物心両面の幸せのために一人ひとりが努力する。経営者も命をかけてみんなの信頼にこたえる。働く仲間の信頼に応える仕事をする。そのような仲間を信じ、私利私欲のためではない、社員のみんなが本当にこの会社で働いてよかったと思う、すばらしい会社を目ざす。仲間との心での結び付きをベースとして経営する。 

人の心は移ろいやすく変わりやすいものです。しかし、仲間を信じ合える会社にするために、経営者も従業員も絶えず、信頼関係を維持し続ける努力が必要なのです。そのためにエネルギーと時間を費やすことが大事です。そうした努力のもとに強い心のつながりをベースとした経営が可能なのです。 

判断の基準をどこにおくか 

経営の原点に立ち返る 

私たちは絶えず厳しい経済環境にさらされています。しかし、この厳しい経済環境の中にあっても、家族、従業員、社会のために “自分の企業は自分で守る。” という気概を持ち、たくましく、生きていかなければなりません。 

昨今の世相が混乱する時に企業を守り、発展させていくためにはどういう判断をするかが重要です。経営哲学が必要なのです。経営トップの経営思想・哲学、それを共有する従業員、こうした正しい経営判断基準が大事なのです。 

経営哲学、人生観、倫理観、考え方が経営にとって不可欠なのです。 

判断基準としての哲学の必要性 

経営哲学、人生観、倫理観、考え方が明文化されておらず、会社の短期的な業績をもとに、能力や熱意をもとに、人間を登用する企業が多く見られます。従業員を能力だけで判断し、能力のある人間ばかりを次から次へと登用することになります。 

経営者の中には地位と権力を手にすると、自分を規制する倫理観、判断基準がないがために、自分の都合の良いように意思決定をしてしまうことが多々あります。正しい判断基準 - 何はしてもよい、何はしてはいけない、という哲学がないために、不正行為に走らせてしまうのです。 

純粋性の高い、美しい哲学をもつ 

アメリガでは一般のワーカーは決められた仕事をしているだけであって、どのように彼らを動かし、どのように利益を出していくのかはトップの能力によるものだ。従って、トップはボーナスをもらうことは当然であり、利益の一部はトップが手にしても決しておかしくない。一般のワーカーは命令されたことをしているだけで、会社の利益に貢献はしていない。 

トップはリーダーです。リーダーは集団のため、自己犠牲を厭わないものなのです。こうした人がリーダーとしての資格があるのです。 

こうした考え方は一夜にして理解してもらえるとは思いません。根気よく、トップはどういうリーダーであるかを説いていく気構えが必要なのです。

盛和塾 読後感想文 第五十二号

採算意識を高める 

京セラではアメーバ単位(事業部制)で、時間当り採算制度を実施し、職場での仕事の結果が誰にでもはっきりと分かるようになっています。社員一人ひとりが経営者の意識を持って、自分たちのアメーバの時間当り付加価値をどうしたら高めることが出来るかを真剣に考え、実践していかなければなりません。 

常日頃、紙やクリップの一つに至るまで、モノを大切にしようとするのは、この時間当りの付加価値を高め、アメーバの業績に貢献する為なのです。 

全従業員が経営者意識を持って、採算意識を高めていくことが大事なのです。 

企業のパイロットとしての役割を果たすには 

経営者の為の経営管理システムをつくる           

個々の事業の実態を的確に把握することが重要であることを経営者は知っていますが、実際に的確に把握することが出来ていないのが現状です。 

経営者は操縦席に座っているパイロットです。飛行機のコックピットに座りますと、前に計器がズラリと並んでおり、その計器を見て操縦します。経営においても、経営判断の指標となる数値が経営者に把握できるシステムが出来ていなければ、いくら素晴らしい着想をもとにビジネス展開を図ろうとも、経営は成功しないのです。 

それには、どういう指標が経営者の目の前に出てくるようにするのかが重要です。各経営部門別に、経営に対する指標が必要なのです。経営は盲目飛行では成り立たないのです。経営状況が大変良く分かる、それも迅速(じんそく)に、経営情報が入手できるシステムが必要なのです。月次決算は月末から一週間あるいは、10日以内に数字がまとまるようでなければいけません。財務諸表-決算書、それだけではなく、経営管理-採算管理に必要な経営資料も必要なのです。すなわち、経営者が本当に使いやすい経営管理システムがどうしても必要なのです。経営の専門家の視点ではなく、経営者の視点から見た経営管理システムが経営には不可欠なのです。 

経営者は、毎日自分が見て正しい経営判断を下すことができるように経営指標を、タイムリーに出てくるシステムを構築していかなければなりません。 

経営の実態が正しく見えなければならない 

例えば、初期投資が大きい会社を設立した場合は、固定費が経費の大部分を占めます。減価償却費、人件費、賃貸料、支払利息等が固定費として発生します。売上が損益分岐点に到達しますと、売上増は確実に、利益を生み出します。 

このような事業の場合は、最初に一定以上の売上が確保できるかどうかが、事業の成否を決定します。ですから、事業をスタートさせた時の取り組みが大切です。スタート時にどのように売上を確保していくかが重要なのです。“初戦に勝つ”ことが分かっている従業員でなければ、その事業を任せることはできません。“初戦に勝つ”為には、厳密な採算管理が必要です。その為には、初期の設備投資をした場合、売上高がいくらあれば損益分岐点が達成できるか、顧客はどのように確保していくのかを厳密に検討していくことが重要です。 

業務スタート後、毎月の損益計算書をレビューしますが、その時、業績の変動をそのままにするのではなく、自分が経営している会社の実態が正しく見えるようなシステム-変動原因が分かるもの-を作り、変動要因を除去することが肝要です。

独立採算の部門別採算と一対一対応の原則

ある企業の実態をなるべく正確に把握する為には、独立採算の部門別管理が重要です。独立採算の部門別採算は、収益性を高める為には必要なのです。一般には異なった事業を単純に分けると思いますが、たとえ一つの事業であっても、部門別に経営管理情報を迅速に提供することのできるシステムが必要です。こうしたシンプルで正確な、迅速な経営情報は全従業員に公開され、共有することが肝要なのです。

また、個々の取引でも、取引一つひとつについても堅実な処理が必要です。例えば、契約金を前払いでいただいた場合は、売上ではなく預り金です。実際に仕事が完了した時点で売上として計上し、それに関わる費用は費用として計上します。

また、お客様との間に売買契約があった場合、契約した金額の振り込みを確認した後、工事発注、材料発注等を行います。

お客様から頂いた仮受金は、お客様に商品をお届けするまでは売上ではありません。メーカーから製品を仕入し、在庫処理出荷処理した後、売上計上します。それに応じてメーカーへ支払った製品仕入れ原価を売上原価として処理します。これが、一対一の対応の原則なのです。

多くの企業では、本当に必要とする数値が出てくるシステムが出来ていないようです。もし業績が悪い場合、それは経営が拙(まず)いという事だけではなく、経営管理の在り方にも問題がある場合があるのです。 

企業において、経営指標となる数値がすぐに出る経営管理システムを作り上げた時に初めて中小・中堅企業から大企業へと飛躍していく基礎が出来ます、と塾長は述べています。 

セグメント毎の分析や、一対一対応の原則を守っていくことにより、会社が発展し、オペレーションが全世界に拡大しても、瞬時に経営の実態を見抜き、正しい判断が出来るのです。 

採算単位の分け方 

各部門別、セグメント別に採算単位を分ける必要があります。製造と営業をに分けます。製造は製品グループ別に更に細分化します。各製品グループは更に製造工程別に細分化します。 

従って工程は、小さな企業として、前工程は仕入先、後工程は得意先と考えます。 

セグメント毎に分け、一対一対応の原則を実施しますと、各工程の管理が大変です、と考える経営者がほとんどです。管理に従業員の時間を使うよりも、営業に時間を配分した方がよいと考えるのです。 

本当に経営に必要な経営指標を知るためには、そのシステムの構築にも相当の時間をかけなければなりません。しかし、管理倒れに陥(おちい)るかというとそうではないのです。その手間を上回る大きなメリットがあるのです。 

原価主義の弊害 

売値を決める時には、営業の人が市場価格を調査し、売値を決めます。売値からコミッション、一般管理販売費を引き、目標利益10%と設定します。そうして、目標原価=売値-(コミッション+一般管理販売費+10%目標利益)が決められます。製造部はこの目標原価以内にコストを下げればいいと考えます。ところが、製品が市場に出回った時に市場価格が2割位下がることが良くあります。こうした場合、会社は10%の目標利益を達成できなくなります。 

製造部門は目標原価を達成すれば、自分たちはよく頑張っていると思うのです。 

この目標原価の考え方は、市場価格に直結した経営管理システムというものがない場合に良くあるのです。売値は経営トップが判断し、どうしたら原価を引き下げることが出来るかという会社全体の経営意思決定のシステムが必要なのです。社長は市場価格が2割下がったのであればどうしたら原価を引き下げることが出来るか考えて、製造部門と迅速に協議する必要があるのです。原材料の仕入れ部門、製造工程・管理部門、全社に社長は激を飛ばしていく必要があるのです。製造現場に利益源泉があることを製造部門の従業員に知らせることが大切なのです。 

原価主義というのは、製造部門のコストダウンへの努力を阻害するのです。 

経営の常識に囚われない 

経営者の中には、数量によって原価は変わります。従って販売部の方が売上数量を通常決めますから、結局は販売部が原価を決めると考える方がいます。 

こういう経営者は、新製品を売り出す時、“来年に売上げが伸びてくれば、ちゃんと利益が出てくるよ。”と言います。これは数量によって原価が変わるという金科玉条(きんかぎょくじょう)になっている概念に基づいている考え方なのです。例えば、“ニューヨークにオフィスを構えますと、初めは色々と経費もかかりますから、売上がいくら以上にならないと黒字転換は出来ません。”  “売上を上げる為に、優秀なセールスマンを雇いたい。これで売上が増えればペイします。” 

赤字なのに更に新しい人を採用すれば、ますます赤字が増えるのです。赤字が増えたらどう対処するか、私は質問します。自分の給料を返上してでも新しい人を雇うぐらいの気構えが必要なのです。 

経営とは、売上増加に応じて泥縄式に手を打っていけばよいと思います。売上を最大にして経費を最小にすることに傾注すべきなのです。 

創意工夫による経費の極小化 

よくある経営者の話ですが、“当社は材料費は売上の30%、人件費は30%、経費は30%、純利益は10%を目標にしています。材料費と人件費の削減は難しいので、経費をいかに少なくするかを常に考えています。” 

あらゆるコスト-原材料費、人件費、経費-を削減対象として考えるべきです。固定概念で考えないようにします。 

良い製品でも、市場価格がありますから、高い価格をつけることは出来ません。市場で値決めがなされるのです。そうしますと、上記の3つのコストをどう下げていくかという事になります。 

例えば、材料費について、長年仕入れしていた仕入先以外にも、新しい仕入先を見つけたり、新しい素材を見つけたり、歩留(ぶどま)り率を上げるとか、色々な創意工夫をするのです。

一般常識に基いて経営を行ってはならないのです。

盛和塾 読後感想文 第五十一号

企業統治、トップが倫理を 

どの歴史を見ても、国であり、企業であり、その盛衰はリーダーで決まる。経営者の行動により、企業の繁栄や従業員の運命も決まります。 

雪印乳業、日本ハム、三井物産、東京電力などの不祥事が発生していますが、日本の企業のリーダーのあり方が厳しく問われています。ある都銀の会長が、暴力団との関係の責任を執り、傷ましい自殺をしたと報道されていました。この会長は、有名な経済誌にたびたび登場し、経営のあり方について意見を述べるほど、著名人でした。 

アメリカでも、経理操作をした通信大手のワールドコムが破綻しました。 

企業統治の危機、経済社会への不信感を招いた原因は、トップの倫理観の誤りが直接の原因です。それは経営の倫理観を失わせ、不正に走らせた経営システムにその原因があると思われます。企業統治の危機回避には、法律や高度な管理システムが急務といわれています。 

しかし、経営の意志決定はトップの手中にあり、会社の内部統制システムはトップの手中にあるのです。トップの意志決定により、内部統制システムは容易にくつがえさせられてしまうのです。 

西郷隆盛が言うように、高い地位に就くのは人格者であり、素晴しい業績を上げたものの労苦には金銭で報いるべきだ。

多くの人々を率いるリーダーは、私欲のためではなく、使命感をもって集団のために自己犠牲をもいとわない高潔な人格を持っていなければなりません。リーダーに必要なのは“人間としての正しい生き方”を繰り返し学び、常に理性でもって自分をコントロールすることなのです。 

“うそは言わない。” “正直であれ。”という倫理観をリーダーは持ち、持ち続ける努力を惜しまず、その倫理観を従業員に守らせることが大切なのです。 

稲盛塾長は上記のように平成14年(2002年)10月29日付日経新聞で語っています。

 

盛和塾で学ぶこと 

盛和塾では “人生はいかに生きるべきか。”ということを学ぶことを目的としています。この学びを各経営者が自分の会社で実践することです。 

心を判断基準にする 

会社設立当初は、経営の経験のない塾長は、経営判断の基準をどこに求めるかということを一番心がけました。いろいろな案件に対して、良し悪しを直ちに判断することが要求されました。その時判断基準を考えるのに一番大事なことは、その人の “心” を基準とすることではないかと考えました。 

“心” は魂から生まれて来ます。子供の頃、両親や学校の先生に教えられた “やって良いこと悪いこと” を判断基準にして来ました。魂から発現した判断基準を経営の判断基準にしてきました。そのことは “人間として何が正しいのか。” ということでした。 

盛和塾でいかに学ぶか 

盛和塾では“心”について学びますが、大事なことはそれを聞くだけではなく、反復して学び、自分の生き方を反省し、自分の生活の中で、実践応用していくことです。 

  1. 自分の学んだことを生活の中で生かし、反省する 

一度学んだからそれで終りというのではありません。教わったことを反復しながら、常に思い出し、実践し、反省していくのです。 

優れた先人 - 稲盛和夫塾長や松下幸之助さんの言われたこと、書かれたことを何度も読み返し、自分で自分に言い聞かせることを続けるのです。沢山の本を読むよりも、こうしたすぐれた人格、高潔な人の書かれた本に集中して、毎日読み続けることが大事なのです。こうすることによって、限られた時間で最も効率良く学ぶことが出来るのです。 

昨今の経済界の不祥事の責任者、トップは、もともと立派な人達でした。しかし頂点を手にした為に、毎日の学びを怠り、反省を忘れ、傲慢になり、自分は他から学ぶべきものはないと考えだし、不祥事を起こし、没落していったのです。立派な人でも知らず知らずのうちに変質してしまうのです。盛和塾で学んだことを、反省を重ねて繰り返し繰り返し学び続けるということが必要不可欠だと塾長は語っています。 

  1. 志を同じくする人と互いに研鐟していくことです

朱に交われば赤くなる。立派な生き方を追求したいという同志が集まると切磋琢磨が起こります。 

人材は群生するのです。人間は社会的な動物です。1人では成長することは出来ないのです。 

  1. 我が師を持つ 

我が師を持つことが出来れば、自分を素直にし、自分を修正していくことが出来ます。注意を受け、叱られるという経験を素直に受け止めることで、成長する機会を得るのです。 

経営者の条件 

  1. 強烈な願望を抱く 

企業経営者は多くの従業員、または自分の家族の生活を預かっています。その人達の為に、自分の会社を立派なものにしていきたいという強い願望を持たなければならない。 

経営者は会社の将来の進むべき道 - 願望を持たなければならないのですが、その願望は寝ても覚めても思わなければなりません。 

過酷な生存競争を生き伸びていくためには、厳しい/激しい格闘技に勝る闘魂がいります。 

経営者は誰にも負けない努力をし、真剣に人生を生きようとすること、自分の家族や従業員を含めて幸せにしてあげようとすること、強烈な願望を持ち続けなければなりません。 

  1. 地味な努力を積み重ねる 

経営上での雄大な構想や斬新な発想は、突然思いつくものではないのです。会社を立派にしたいという凄まじい願望が創造的な発想を生んでいくのです。企業をとりまく環境や業種など、人材不足、経験不足、資金不足等、種々な条件を理由に創造的な発想が浮かばないということを良く聞きます。それは、その経営者がド真剣に生きるか死ぬかと物事を考えていないからなのです。 

例えば、技術開発が進み、当社の製品の需要が無くなるという事態に直面したとします。凄まじい危機感が高まってきます。発想の転換どころではありません。必ず現状を打破するような斬新な発想というものが生まれて来ます。何とかしたいという必死の思いが、真にクリエイティブな発想を生み出すのです。 

どんな偉大なことも、本当に地味な一歩一歩の積み上げでしか成し得ないのです。地味な一歩一歩の積み上げではなく、もっと楽ないい方法がないかと思い、時間を、お金を無駄に使い、大変な危機に対応出来ないことになります。経営に近道はないのです。 

物を売るにしても、作るにしても、地味な仕事で構わないのです。コツコツと売上を伸ばしていく、地味な仕事を綿々と続けていくうちに、幾何級数的に拡大していき、創造的な構想が生まれ、大きなビジネスへと成長していきます。 

  1. 常に謙虚である 

二代目社長が就任しますと、最初のうちは“私はわかりません”“色々と教えて下さい”と謙虚にふるまいます。ところが、周囲からチヤホヤされると、自分には力があると過信してしまい、努力をしなくなり、人の意見に耳を貸さなくなり、傲慢になってしまうことが多々あります。 

そうしますと経営判断を間違い、不祥事を起こしたり、人格が変質してしまいます。 

創業者ですら、一生懸命働き成功した後、傲慢になり、堕落し、没落することをよく見かけます。 

いつも“人間として何が正しいのか。” “私心なかりしか。” という基準を持ち、理性でもって、経営に携わっていくべきです。毎日の反省、謙虚さは大事なことです。 

本田宗一郎に学ぶ 

謙虚さを考える時、本田宗一郎さんを思い出しました。世界的な本田技研工業というすばらしい自動車メーカーを作られた本田宗一郎さんは、会社がうまくいくと自分の出る幕はないと判断され、自分の子供にも跡を継がさないで、見事に身を引かれました。亡くなられた後も、盛大な葬式もされませんでした。 

本田宗一郎さんのセミナーに参加した時、本田宗一郎さんは工場・仕事場から会場にかけつけて、仕事着のまま演壇に立ち、言われたそうです。

“皆さんは何しに来たのか。大体温泉に入って浴衣を着て経営なんて学べるわけがない。他人の話が経営のプラスになどならない証拠に、私は誰にも経営について教わっていない。少しでも暇があったら会社に帰って仕事に励んだほうがまだましだ。” 

本田宗一郎さんの本音の話は、彼の実体験から出たものです。こうした人を引き付けるような人からとことん考えを吸収して見ることが大事です。 

生き方を学ぶ 

本田宗一郎さんは従業員に大変厳しい経営者でした。いい加減な仕事をしている従業員を見つけると、真剣に怒り、スパナやハンマーを投げつけたそうです。 

一方では浜松の芸者を呼んで、ドンチャン騒ぎをする。仕事も一生懸命なら、遊びも一生懸命でした。後日、若気のいたりで飲んでドンチャン騒ぎをやったけれども、そういうものが本当の人生ではないことを悟ったのです。成功されるに従って、本田宗一郎さんは謙虚になりました。自分が身を引く時、子供には跡を継がせない、右腕だった副社長の藤澤武夫さんと一緒にきれいに身を引かれたのでした。社葬もいらないと言ったそうです。 

凄まじい闘魂を持つ 

本田宗一郎さんのように、家族のため、従業員のため、素晴しい会社にすることを目的として、誰にも負けない根性と執念で経営にあたるべきですと塾長は語っています。凄まじい闘魂が必要なのですが、しかしもし自分の心をコントロールすることが出来なければ、方向を誤り、破滅に向ってしまいます。 

“会社をこうしたい。” “仕事をこうしたい。” と強い想いが大事です。創造的な発想は、この強い想いが源泉なのです。第三者から創造的な発想を学ぶことは出来ないのです。 

自分には創造性がない、能力、頭が悪いと思ったら、それを自覚して必死に一生懸命にやれば必ず成功できるのです。大切なことは、強烈な願望があるかないかということです。 

燃えるような闘魂があり、“何としても会社をよくしていきたい。” という思いが強い人こそ、“人間として何が正しいか。” という哲学を学ぶことが大切です。“燃えるような闘魂” を持ち続け “人間として何が正しいか。” という哲学を学び続けることができれば、その成功を持続することができるのです。 

志を持って自分の心を高める 

盛和塾は、会社を成功させ、それを長く持続させるための原理原則を教わる場所です。成功したい野心をもち、もう一方では生きていることに感謝する、素晴しい考え方を自分のものとしなければなりません。 

ただ一回しかない人生を、素晴しい仕事を通じて、家族や従業員はもちろん、社会のため、世界のため、地球のためになるよう、それぞれの立場で努力するのです。 

経営のための会計学を学ぶ 

経営者は経理が判っていないと会社経営は出来ません。経営のための実践会計原則です。 

経営管理の一つ、実践会計原則にはいくつかのキーポイントがあります。 

  1. 一対一対応の原則

あらゆる取引には必ずその取引を明確にする記録(紙又は電子)が必要です。例えば入金があった場合は、どの売掛金請求書のものか明示されなければなりません。 

  1. ダブルチェックの原則

あらゆる取引は少なくとも2人の異なった人が正確さや誤りがないか、チェックし合います。 

  1. 完全主義の原則

会計の数字は正しいものでなくてはなりません。 

  1. 筋肉質経営の原則

将来使う見込みのないものは処分し、余分なものは一切買わない。無駄な資産は保有しない。 

  1. 採算向上の原則

売上を最大に経費を最小に努める。内部の経費を節約することによって、利益を生み出す。 

  1. 現金主義の原則

決算書を見る時、貸借対照表、損益計算書を見るだけではなく、現金資金計算書も充分検討し、現金の流れを絶えずチェックする。 

  1. ガラス張りの原則

全ての会計経営情報は、全従業員に公開されていなければならない。やましい経理処理は許されない。 

  1. 保守主義の原則

できるだけ売上は保守的に計上する。本当に得意先が支払ってくれるもののみを売上とする。経費はできるだけ保守的に記録計上する。その原因が現在発生していると思われる場合は、発生するであろう将来の経費は直ちに計上する。 

  1. 迅速会計の原則

会計処理は取引発生時に同時に経理処理する。取引記録のコンピューターへの入力は、取引と同時になされなければならない。 

 

経営者の意思決定により、人や物が動き、会計・経理情報が生まれます。経営者のこうした経営判断が、売上・経費のどの科目に反映されるのか、知っておく必要があります。 

常に脱線しそうな人間が “何が正しいのか” と問い続けながら、日々反省を繰り返していくと、運命までも好転し、人生 – 仕事に成功することができるのです。

盛和塾 読後感想文 第五十号

人は何のために生きるのか 

京セラ設立後、塾長は、経営経験のない中で、次第に京セラという会社はどうあるべきかを考えました。27人の従業員を路頭に迷わすことはできないこと、京セラ設立を支援していただいた方々への御恩とご厚意に報いなければなりませんでした。 

  1. 全従業員の物心両面の幸福を追求する会社へ 

ファインセラミック材料を開発した稲盛和夫の技術を世に問うのではなく、最優先するのは従業員の物心両面の幸せを追求することと考えました。従業員をいかに幸せにするかということを会社の目的と決め、実践していきました。 

  1. 人間として正しいことを正しいままに貫く 

経営をするには、毎日経営判断を迫られます。経営経験のない塾長は、従業員の人たちが次々と判断を求めてくることに対して判断をしていきます。その時の判断基準は “会社であれ何であれ、人間として正しいことを正しくやっていく。” というものでした。会社経営の難しいことは解からないが、子供の頃、両親や学校の先生に教わった、人間としてやってよいこと悪いこと、それを基準として経営判断をせざるを得ませんでした。 

京セラはその後、順調に成長発展を遂げてくるのですが、それは自分達だけの努力でなく、周囲の方々にいろいろと助けていただいたからでもある、決して成果を自分達だけで独り占めしてはいけない。世のため人のためにお返しをしなければならない。

“世のため人のために尽すことが人間として最高の行為である。” と信じた塾長は、稲盛財団が主催する京都賞を作った。 

  1. 動機善なりや、私心なかりしか 

当時、NTTが独占して来た日本の電気通信事業が民営化され、民間からも電気通信事業に参入できることとなりました。NTTの通信料金は海外の通信料金と比べて、非常に高いものでした。国民のために、何とか通信料金を下げたいという正義感があったそうです。 

塾長は自問しました。この通信事業への参画には私利私欲の心が自分にあるのではないかと厳しく自分自身の本当の意思を確認したのでした。そして“動機善なりや、私心なかりしか”と自問すること6か月を要したのでした。 

こうして、自分の本当の動機は善なのだ、私心はないのだと確信して、第二電電の操業に踏み切ったそうです。同じく参入して来た企業が撤退するなか、第二電電は着実に発展していきました。 

第二電電(KDDI)は売上3兆円の企業に成長しました。 

  1. 世のため人のためという考えが成功を導く 

何も知らなかった故に、子供の頃に両親や学校の先生から教わった人間として正しいことをしていこうという一点を判断基準に置いた。えげつないことをして金儲けをするのは経営ではない、正しいことを貫いて利益を得るのが経営だという結論に達しました。 

  1. 六波羅蜜(ろくはらみつ) 

お釈迦様は悟りをひらくための修行として六波羅蜜を説かれました。悟りをひらくとは、人間性を高める、心を美しく、きれいにすることです。心を磨いて美しいものにしていけば、悟りの境地に達することが出来、人生にも成功することが出来ます。 

六波羅蜜:  布施(ふせ)             - ほどこしをする/人のため

                    持戒(じかい)         - 戒律を守る

                    忍辱(にんにく)      -  耐え忍ぶ

                    精進(しょうじん)  - 一生懸命努力をする

                    禅上(ぜんじょう)  - 心を沈めて反省する

                    智慧(ちえ)    - 上記5つを守れば、智慧、宇宙全体を司る知恵を得られる 

精進(しょうじん)

これは一生懸命に働くこと。会社を潰してはならない、従業員を路頭に迷わせてはならない、という一念で塾長は一生懸命働きました。その一生懸命働くことが自分自身の心を磨くこととなりました。従業員のために働いたことが、自分の為にもなっていたのです。“情けは人のためならず。” 世のため、人のために尽すことが実は自分自身の心を美しく、きれいにすることにもなるのです。 

  1. 人生の目的は魂を磨くこと 

0年~20年     社会に出る為の準備

20年~40年   一生懸命働く

40年~60年   〃

60年~            死を迎える為の準備期間 

人間の一生は上記のようなものではないかと塾長は考えられました。 

人は必ず死を迎えます。人間には肉体と共に魂があります。死は、肉体はこの世に置き、魂はあの世へと向う新しい旅立ちと塾長は考えています。肉体は滅んでも人間は魂という形で永遠に生き続けるのだと考えられています。 

死が魂の新しい旅立ちとした場合、私達は何の準備をしなければならないのでしょうか。両親のもとに生を享けますが、実は何百年も前から生き長らえている魂が、その赤子に引き継がれていくのではないかと思います。新しい魂の旅立ちが始まるのです。 

人生では成功があったり、不幸があったり、災難があったりいろいろなことが起きます。人生において成功することが望ましいのですが、例えば、立派な会社をつくったり、立派な業績をあげたり、学問を究めたりすることも大切なことですが、この現世で素晴らしい美しい心を磨き続けることが人生の目的と考えます。心を磨き続ける為には、私利私欲にはしるのではなく、世のため人のために一生懸命働くことが必要なのです。 

  1. 善き思いと善き行いが運命を変える(因果応報の法則) 

人間にはそれぞれ運命があると言われています。自分が生まれて来た時から、歩むべき道がすでにひかれていると考えられています。 

しかし運命は変えることが出来ます。運命を縦糸とすれば、横糸には善きことを思い、善きことを行えばよい結果が生まれ、悪いことを思い、悪いことを行えば悪い結果が生まれるという因果応報(いんがおうほう)の法則があるのです。 

運命的に悪いときにさしかかったとき、自分の善き思い、善き行いによって自分の人生を好転させることができるのです。 

因果応報の法則については中国の明時代の賢人、袁了凡(えんりょうぼん)が書いた息子への手紙、陰隲録(いんしつろく)という本に書かれています。 

  1. 人生を素晴らしいものにするために 

いくらお金持ちになっても、名誉を授けられようとも、有名になろうとも、私達は死ぬときには魂だけであの世に旅立たなければなりません。その時自分が持っていくものは“美しい心”をもった魂しかないのです。人生で苦労し、やさしい思いやりのある、美しく、素晴しい魂になっているかどうかが大切です。 

どんな災難に遭っていようとも“忍辱(にんにく)” 耐え忍ぶことが大事です。自分の人生は必ず明るいものになるのだと信じることが大切です。自分の心を明るくします。 

自分の身近にいる家族、近所の方々、同僚、社会の為に少しでもよいことをする - 善きことを思い、善きことを行う – そういう気持ちで毎日を過ごす。この積み重ねが自分の人生を好転させます。

盛和塾 読後感想文 第四十九号

企業経営における倫理 - リーダーと人格について 

企業不祥事とリーダー 

アメリカ、日本において昨今、経営上の不祥事が多発しています。

能力もあり、努力もして頑張ってきて、企業を発展させてこられた立派な経営者が不祥事を起こすことがあります。 

経営者としての自分を過信し、当初持っていた素晴らしい企業経営理念を忘れ、変身していく経営者が不祥事を起こしているわけです。 

リーダーはどうあるべきかが厳しく問われています。 

日本の格言には、“才子、才に溺れる”とあります。“才覚” に恵まれた人は、その並外れた才能を持って大きな成功を収めるけれども、その “才覚” を過信すれば、その使い方を誤れば、やがて破綻に至るという日本の先人の言葉です。 

才覚努力人格 

人並外れた “才覚” や “努力” の持ち主であればあるほど、それらを発揮する時には充分コントロールすることが求められています。塾長はそのコントロールできるものはリーダーの持つ“人格” であると語っています。 

“人格” こそがその人の “才覚” を発揮する方向と “努力” を重ねる方向をコントロールすることが出来ます。“人格” に歪みがあれば、“才覚” や “努力” を正しい方向へと導くことが出来ず、結果として経営を誤らせてしまいます。 

人格は生まれた時以来の “性格” と人生の中で学んだ “哲学” によって作られています。人生の途中で素晴らしい哲学を学んでいる場合は、生来の性格を正しい方向に向けることが出来、リーダーとして成功することが可能だと思います。 

哲学を繰り返し学ぶ 

身につけるべき素晴らしい “哲学” とは、長い歴史の風雪に耐え、人類が長く継承したもので、人間のあるべき姿、持つべき考え方を明らかにし、先人が我々に残してくれた教訓です。 

“知っていることと実践できることは違う。” ということに留意することが大切です。先人の教訓を知識として知っているだけでは価値がありません。自分を戒め、人格を高める為に役立つものでなければなりません。 

リーダーにとって必要なことは、人間のあるべき姿、持つべき考え方を繰り返し学び、それを常に理性の中に押し留めておけるように努力をすることです。 

スポーツ選手は、素晴らしい肉体を維持する為、日々肉体を鍛錬します。それと同じくリーダーも絶えず人格=心の手入れをする-繰り返し素晴らしい哲学を学ぶ-ことが必要なのです。 

心の手入れ 

人格-心の手入れをするには、意識的に学ぶことと反省が必要です。

  1. 哲学書を毎日読む時間を作る。
  2. 学んだことを他の人々と共有する。
    従業員と朝礼で、勉強会で学び合う。
    盛和塾例会に出席する/盛和塾機関紙を読む。
  3. 毎日反省をする。
    毎晩5分間、一日の中で自分の言ったことややったことを反省する。
    人として恥ずかしい事を言ったり、人の道に外れたことを行わなかったか反省する。 

企業統治に近道はあるか 

“企業統治には近道はありません”と塾長は語っています。

リーダーが古今東西の素晴らしい哲学を座右のものとして毎日紐解き、“人格” 向上に努め続ける。高潔な “人格” を維持しようと努力を続ける。これこそが、リーダーを、企業を転落から未然に防ぐ最善の方法であると塾長は述べています。 

日々の研鑽が高い人格を維持する 

塾長は語っています。“私の人生は経営を通じて理念を高め続ける毎日でした。” 理念、哲学というものは、一度理解したからいいというものではなく、永遠に高め続けなければならないのです。 

常に “心” の手入れをし、人格を高く維持しようと努力すれば、人格というものは立派なものに変わっていくのです。 

人間は繰り返すことで物事が身に付き、そうすることではじめて、重大な経営判断を迫られた時、自然とその身についていることが出てくるのです。 

企業経営に不可欠なプリミティブな教え 

企業の犯した犯罪行為のほとんどは “嘘をつく” “騙す” 等、トップ自らが部下に向かって指示をすることによって発生しているのです。 

リーダーとして当然知っているプリミティブな教え;

“人を騙すな。”

“嘘を言うな。”

“正直であれ。”

を無視して犯罪行為・不祥事が発生しているのです。 

不祥事が発生しますと、トップは以下のように応えます。

“こういう不祥事はあってはならないことです。二度と不正が起こらない様に企業内でルールを作り、再発防止のシステムを作ります” 

しかし、犯罪者が再発防止のルールを作ることは不可能です。 

何故ならば、不祥事の本当の原因は犯罪を犯したリーダーの心-人格だからです。“人を騙す”“嘘を言う”心を変えなければならないのです。 

企業不祥事を無くす為には、責任者であるトップが最もベーシックな、人としての原理原則を毎日反芻し、自分に言い聞かせ、実践する必要があるのです。

リーダーが果たすべき10の役割 

リーダーが果たすべき役割は、洋の東西を問わず、共通のものです。アメリカ、日本、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、どの地域でも通用し、各地のリーダーにも理解し、納得出来るもの、実行出来るもの、そういうリーダーの役割があるのです。 

  1. 事業の目的異議を明確にし、それを部下に指し示すこと

何のためにこの事業をするのかといういう事業の目的、意義を明確にし、その目的や意義は、自分自身がその崇高な目的のために働くという大義名分が感じられるものであれば、多くの部下の力を結集して、その力をまとめて行くことが出来るのです。 

例えばNorthridge Homes, Inc.の場合は、“お客様に最適な住宅を提供することによって社会に貢献し、従業員の物心両面の幸福を追求する。” ということがあります。 

リーダーは部下を引っ張っていくために、このような高遠な目的、意義を明確にしておく必要があります。 

  1. 具体的な目標を掲げ、その実現計画を立てる

リーダーは具体的な目標を立て、それを実現するための計画を立てることが必要です。 

目標や計画を立てるにあたって、リーダーはその中心になりますが、その際、幅広く部下の意見を聞き、衆知を集めることが必要です。 

トップダウンで決めるだけでなく、目標や計画の策定段階から部下を巻き込み“自分達が立てたものである”という意識を、すべからく、部下にもってもらうようにします。 

トップダウンで大きな目標を決定する場合でも、なぜそのような目標や計画が必要なのか、部下たちに懇々と説明しなければなりません。トップが下した決定に心から納得するまで、徹底的に話をしていくことが必要です。 

  1. 強烈な願望を心に抱き続ける

リーダーは強烈な願望を心に抱き続けなければなりません。その強い願望を持って、目標を達成するようにしなければなりません。 

潜在意識にまで透徹するほどの強く持続した願望、熱意によって、自分の立てた目標を達成します。トップが高々と目標達成のためのスローガンを掲げて、部下を引っ張って行くのです。 

願望とは寝ても覚めても心に抱いているような強烈な願いです。 

強烈な願望を部下と共有するため、あらゆる機会を通して、又、コンパを開催し胸襟をひらいて、部下たちと目標を達成することの意義やその願望を徹底的に話し込むことが大切です。 

リーダーの強い願望を部下に理解してもらい、部下の士気がトップの士気のレベルまで上がることによって、全員の力を結集させることが出来るのです。そうすることによって、願望を成功させることができるのです。 

  1. 誰にも負けない努力をする

誰にも負けない努力をするリーダーがどの経営にも必要です。リーダーが誰よりも一生懸命仕事に打ち込む姿を見て、部下がそれを真似てくれるようになるまで、誰にも負けない努力を払うことが大切なことです。 

リーダーはどの仕事でも渦の中心になり、一生懸命働き、率先垂範し、部下を引っ張っていきます。 

  1. 強い意志を持つ

リーダーは強い意志を持たなければなりません。 

ビジネスには景気変動や予期せぬ事態がつきものです。競合他社との競争や、厳しい顧客からの要求もあります。強い意志を持たないリーダーは、一度立てた目標をすぐに撤回や下方修正をしてしまいます。目標は有名無実となってしまいます。そればかりか、リーダーの信頼も尊敬も失ってしまいます。 

一度立てた目標は何としても達成するという強い意志 – これはリーダーとしての大切な資質の一つです。 

  1. 立派な人格を持つ

リーダーは立派な人格を持っている必要があります。リーダーは立派な人格を持ち続けることの重要性を自覚し、努力を重ねて行く人でなければなりません。 

すばらしい哲学を持つ、学び続けると同時に、先人達、両親、学校の先生からの一見単純な教え –“人を騙さない”  “ウソをつかない”  “貪欲であってはならない”  “正直でなければならない” -をしっかりと守れる人がリーダーです。 

立派な人格をリーダーが持つことにより、誤った経営判断や不祥事の発生を防ぐことが出来るのです。 

  1. どんな困難に遭遇しようとも決してあきらめない

リーダーはどんな困難に遭遇しても、決してあきらめない人、あきらめることを知らない人、なのです。 

はげしい競争の中で、経済状況のドラスティックな変化に遭遇してリーダーは “闘魂” を持ち、集団を引っ張っていかねばなりません。 

  1. 部下に愛情をもって接する

愛情とは、相手を思いやる気持ち、利他の心です。

しかし、その愛情は部下を甘やかす小繕であってはなりません。つまり目先のやさしさではなく、長い目で見て、本当に当人の成長や発展につながるなら、敢えて厳しさを持って対処する真の愛情 – 大繕でなければなりません。 

リーダーは部下の人たちの幸せを常に心に留めて部下をまとめ、引っ張っていくのです。 

  1. 部下をモチベーションし続ける

リーダーは部下の人たちをモチベーションし、やる気を起させる様に努めなければなりません。部下が常にやる気をもって仕事ができるように気を配ることも、リーダーの大事な役割です。 

部下が困っている時は相談に乗り、アドバイスをして元気になるようにはげますこと、予定を達成した時や、立派な仕事をした時には、ねぎらいの言葉をかけること等、リーダーは日頃から部下の動向に注意を払うことが大切です。 

  1. 常に創造的でなければならない

お客様の視点から、新製品や新しいサービスを考える、技術開発/発明が社会のシステムやビジネスモデルをダイナミックに変えてしまう時代です。その時リーダーは3年、5年先に何を新製品として、新しいサービスとして提供するのか、将来に絶えず目を向けて、創造的な仕事をリードしていくことが求められています。 

企業が生きのびる為には、毎日の創意工夫をおろそかにしてはいけません。リーダーは絶えず現場に出向き、次から次へと技術開発、新製品開発、新しいサービスの提供と創造的な分野でも、リードして行くことが要求されています。

盛和塾 読後感想文 第四十八号

ガラス張りで経営する 

全従業員が経営に参画して行くことにより、企業は成長・発展し続けると思います。全従業員が経営に参加して行く為には、従業員に経営情報を即座に開示していくことが前提となります。 

その経営情報は従業員に分かり易く、従業員が活用できるものでなくてはなりません。

ガラス張りの経営 - 隠すことをせず、オープンにすることにより、役立つ経営情報が共有されると自然と会社内に信頼関係が生まれると思います。従業員一人ひとりが心をひらき、オープンに仕事をすることが大事と思います。 

中国の経済発展について 

  1. 中国の繁栄が長く持続するために 

中国は経済先進国の一員として、世界の経済社会でたいへん大きな役割を果たして来ました。13億もの国民が情熱と熱意をもって努力をすれば、中国はますます発展・成長していく、と塾長は語っています。 

しかし、国、企業が発展し成長していきますと、様々な問題が発生し、その成功を長く持続することが難しくなることがあります。 

大企業病です。経営者や社員が安定と保身を優先し、新しいこと、未知のことに挑戦しようという気概を失い、形式主義や官僚主義がはびこるようになり、企業は活力を失い、衰退の道をたどるのです。 

もう一つは企業の経営管理体制の不備です。成功を収めた多くの企業が放漫経営に陥ってしまうのは、成功し発展して行く過程で、実践的な管理会計の原則とシステムを確立することが出来なかった為だと思います。 

会社の売上高が巨大化したものの、部門ごとの業績が明確になっていない為、どの部門で利益が出ているのか、あるいはどこで損がでているか定かではない。そのうち手の打ちようがなく、企業が倒産してしまう。 

  1. 経営管理の原則 

中国経済が健全な発展をし続けるためには、中国企業の経営管理体制を強固なものにすることが大切です。 

塾長は経営管理の原則、七ヶ条を述べています。 

・キャッシュベース経営の原則 -現金の動きに焦点を合わせる。

・一対一対応の原則 -資産・負債・売上・原価・経費 -取引には会計資料が必ず必要。

・筋肉質経営の原則 -無駄なもの、余分なものは購入しない。無駄なものは処分する。

・完璧主義の原則 -曖昧さや妥協は排除する。

・ダブルチェックの原則 -複数の人が取引をチェックし合う。

・採算向上の原則 -社員一人ひとりが採算意識をもって仕事をする。

・ガラス張りの経営原則-心をベースとした経営。従業員の信頼関係を構築する。 

これらは盛和塾機関紙第二十二号に詳しく説明されています。私の読後感想文の中でもまとめてあります。 

  1. 政治と徳治 

中国の江沢民主席は法治と徳治の両立が必要だと述べられたそうです。法治とは、合理的に経営を進め、企業を永続的に発展させるということです。徳治とは中国人民が古来培って来た人間としての徳 - 中国の精神的規範や倫理観をベースとして企業の経営哲学を確立し、全社員と共有するという考えです。 

精神的規範や倫理観とは“人間として何が正しいか、この正しいことを正しいままに置く”姿勢だと塾長は語っています。つまり天道-天が指し示す道理に従うことだそうです。 

京セラは、精神的規範-あらゆる人間の “共感” を得られる哲学を企業内に確立して、共有することが出来たために、発展して来ました。 

  1. 王道 

経済大国になった中国、強大な軍事力を有する中国は、第二次世界大戦で日本が犯した覇権主義に陥ることなく、王道に沿った国家運営-徳をもって行う-を将来にわたって実現していくことを塾長は要望されました。

盛和塾 読後感想文 第四十七号

“宇宙の意思”と調和する心 

この世には、すべてのものを進化発展させていく流れがあります。これは“宇宙の意思”だそうです。この進化発展は、愛と誠と調和に基づいている為、何億年も続いていると思います。この進化発展する宇宙の流れ、その巨大なエネルギーの流れに沿って、同調して人生を生きて行くと運命が明るくひらけていくと塾長は述べています。 

この宇宙の流れに逆らって人生を送ると、運命が間違った方向に向いてしまいます。 

これは、大きな川の流れにのって進むのか、あるいは流れに逆らって進むかということと同じことだと思います。 

宗教について 

  1. 廃仏毀釈(はいぶつきしゃく) 

江戸時代後期、日本人は西欧諸国が素晴しい近代国家になっているのを目の当りにして、日本を封建社会から近代国家へ導くために明治維新を成し遂げました。 

宗教を排除し、“廃仏毀釈”を実施しました。近代科学が発達し、科学技術が進歩して行く中で、怨霊、亡霊、幽霊というような目に見えないもの、科学的に証明できないものを信じるのは無意味だと考えた近代人は、自分達の目で見、耳で聞き、近代科学で証明できるものしか信じなくなっていきました。 

日本では仏教や神道、その他の宗教を“迷信”として捨ててしまったのです。迷信や崇などは人心を惑わすもので、信じてはならないとしたのです。 

  1. 道徳・倫理感を教えてこなかった日本 

近代化の中で、明治時代、日本人の生活から宗教が切り捨てられて来ました。明治政府は人間のモラルの確立として“教育勅語”を作りました。教育勅語は日本人の道徳観、倫理感を表わしたものでした。しかし天皇制に基づく中央集権国家の思想を示し、天皇を神格化するものでした。 

権力を握った軍部は、国民を統制し、侵略戦争を展開するのに都合のよいように、教育勅語を利用しました。軍部は忠君愛国の教育の為の道具として悪用しました。 

第二次大戦敗北後は忠君愛国の教育の否定と共に、教育勅語、日本人の道徳感・倫理感も否定されてしまいました。 

大半の戦後の教育を受けた日本人は、道徳感・倫理観を学ぶことが少なかったのです。その人達が親となっておりますから、その子供達にも日本の道徳観・倫理観を学ぶ機会がありませんでした。 

  1. 極楽浄土(ごくらくじょうど)を求めた昔の人々、現世利益を求める現代人 

仏教、キリスト教、イスラム教にしても、現世の利益ではなく、来世(死後)で救われるということを説いているそうです。仏教の場合、浄土真宗では、現世では苦労しても、阿弥陀如来(あみだにょらい)が極楽浄土へと救ってくれる。古くからの宗教は、苦しい現世を生き抜いて、来世で救われる、極楽浄土や天国で往生(おうじょう)することを説いているそうです。 

現代人は、死後の世界があることを信じている人は少なく、肉体が滅びれば、それですべて終りだと思っている人が大半を占めていると思います。教育のある人ほど、こういう死後の世界を信じないと言われています。それは、肉体が無になっていくと同時に、自分自身そのもの、つまり今もっている意識も無になってしまうと考えるからです。 

江戸時代までは、実生活の中で霊を信じていたわけで、病気にかかれば怨霊(おんりょう)に祟(たた)られたとして、加持祈祷(かじきとう)で治そうとしました。 

明治維新までは、神社は怨みを持って死んだ人の魂を鎮めるために建てられたそうです。偉い人を祀るのではなかったそうです。日本の神社は死んだ人の怨霊、亡霊が身近にいると信じていた為に、作られたものだったそうです。 

  1. 心の構造 - 魂の存在 

人間の心の構造を同心円で見てみます。 

“人間の心“

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理性:大脳皮質の前頭葉の脳細胞が司る論理的な考え方。事業経営、いろいろと考え戦略を練る働き 

感情:五感を司り、腹を立てたり、楽しかったり、喜んだりする機能

感覚:美しく見える、好き嫌いなど判断する機能 

本能:肉体を維持していくための機能。食欲、赤ん坊がお母さんのお乳をほしがる 

魂:前生から引き継いだ思いや行動・日々の思いが集まったもの 

真我:すべてに共通のもの、 “山川草木悉皆成仏(さんすいそうもくしっかいじょうぶつ)” 山も川も木も森羅万象(しんらばんしょう)あらゆるものに仏が宿る。人間の心の中心にある “愛と誠と調和に満ちたもの。”  真我は “真善美 ”    そのものを表します。

・真:正しいこと、誠、宇宙の真理

・善:良し悪しは感ずる感情・良い感情

・美:美しく見える感覚 

  1. 魂を磨く 

魂は真我を包んでいます。前生で経験したものでつくりあげた思い、意識が真我に覆いかぶさったものを魂というそうです。 

理性・感情感覚・本能から発信してくる意識を私達は受け取ります。忘れたもの、覚えているものもあります。 

受け取った意識は潜在意識として魂に残ります。潜在意識には体験したことや思ったことが蓄積されています。 

魂のところにその潜在意識があります。肉体がつくり出す(理性・感情感覚・本能)意識がすべて魂に吸収され、魂に蓄積されていくそうです。肉体が死んでも、その潜在意識は魂に、意識体として残ります。その魂は、生まれ変わって次の肉体に宿って現世に出てくるそうです。 

善因(善き事)をした人の魂は、善き事が貯金された魂としてよみがえります。一方、悪いことをした人の魂には悪い意識がたまり、次世代に引き継がれてしまうのです。 

立派な経営をしようと思ったら、経営を伸ばす努力だけではありません。善き事を思い、善きことを行う、心を高めることが経営そのものなのです。成功を長続きさせるには、心がりっぱでなければなりません。心がりっぱとは、魂のレベルが上がっていくことなのです。 

  1. 善きことを思い実行することが、現世利益をもたらす 

盛和塾月例会に参加する、盛和塾機関紙を読む、等も大事ですが、お釈迦様が説かれていることを、塾長が私たちに伝えていることを実践しようとすることが大切です。 

自分のまわりの人たちに少しでもよくしてあげたいという気持ち、利他の心を持たなければ、永続的な繁栄はないのです。自分の心を高める、善きことを積み重ねていけば、あの世へ行ったときに極楽往生するだけではなく、因果応報(善因は善果を生み、悪因は悪果を生む)、必ずよいことが現世でも起こってきます、と塾長は語っています。