盛和塾 読後感想文 第三十五号

ビジネスの本質

ビジネスの本質を忘れることが良くあります。まわりに振り回されて、自社の本来のビジネスとは離れた処へ飛び石を打ってしまい、大きな資金を投入、又従業員を配置転換してしまうという誤りを良くしてしまいます。これは塾長の言われる原理原則(自社の本来のビジネス)から離れてしまうからだと思います。“隣の芝生は青い”と思ってしまうことは、慎まなくてはならない。

製品の語り掛ける声に耳を傾ける

これほどまでに、現場主義を通した例は聞いたことがありません。仕事に行き詰った時には、その対象となるものや事象を真剣に、謙虚に、素直に観察し続けると塾長は述べています。

こうした観察に継続して、魂を注入していくのには、相当な力と断固とした心構えが必要です。そうした心構えを養う方法は、とにかく自ら現場に出向いて、現場の人の働きを見、話をしていくことの積み重ねによって生まれる。そうすることにより、自然に断固とした心構えが生まれると思いました。 

弁護士の中坊公平さんが、森永ヒ素ミルク事件(約137人の乳児が亡くなった)の弁護団長を務められた機、70軒以上の家庭を訪問し、現状を見、お母さん方々の苦労を知り、何が最も良い方法かを探り出そうとしました。本当に頭の下がる、涙なしには読めないお話でした。人に感動を与えるぐらいの徹底した現実主義を見習いたいと思いました。

発明、発見は観察力の賜物

京セラが開発したアモルファスシリコンドラマ物語は、徹底した“観察とはこうあるべき”という教えだと思います。 

“機械の鳴き声を敏感に聞き取る”のお話も、いかに観察の感度が大切かを教えてくれています。何かがおかしい時というのは、調和が乱れている時だと言われています。こうした鋭い観察力は、日頃から“有意注意”をみがいていないと生まれないと思います。

松下幸之助に学んだ 松下流経営哲学の神髄

木野親之さんが松下幸之助さんとの仕事上から教わった教訓は、かけがえのない貴重な人生の宝物です。叱られっぱなしの40年間と言われておりますが、木野さんは見込みのある将来性のある人物だと松下幸之助は見抜いていたのです。“経営の究極は人間学にあり”ということですが、松下幸之助さんは、1946年にPHP (Peace and Happiness through Prosperity) 運動を始めたと言われています。第二次世界大戦で敗戦国となった日本をどう立て直していくのかを考えられた。

  1. 幽霊会社になったらあかんで。

“幽霊会社にだけはなるなよ”のお話の中で、一番怖いのは幽霊やなくて人間やで、世の中には幽霊人間がおり、そういう人が社長になり、足のない幽霊会社を経営しておる。と松下幸之助さんは言ったそうです。経理部長が会社の決算書を作成しても、しっかりと読まず、いい加減な経営をする社長、又経理部長自身が決算書をしっかりと読んでいない、これが幽霊会社やと松下幸之助さんは述べています。

  1. 困っても困ったらあかんで。

“困っても困ったらあかんで” のお話も、大変面白い話で、元気づけられます。外部からの色々な影響があってもそれに対処して、自分が困ったと思ってはいけない、振り回されてはいけない。万策尽きたと思うな。一生懸命やれば、必ず新しい風が吹く。この考えは塾長の教えと同じ、業績が目標を達成しないのを外部のせいだとしてはいけない、自分の仕事ぶりに問題があるのだ。 

  1. 君、社長を辞めたらどうや。”  

“君、社長を辞めたらどうや” のお話は、木野さん及びその部下が業績をいいことに天狗になっていたのだと思います。反省する、謙虚さがない、これでは大きな事業をやれない。大きな山には登れないと、松下幸之助さんは考えたと思います。“君だけでなく、全役員も全従業員も辞めさせろ” と言われた木野さん。“君が変われたらええんや。重役も全部変わり、社員も全部変わったらええ。大きな山に登れる人間に変わらんか” と松下幸之助さんは木野さんを諭しました。

  1. リース会社の大損

アメリカでのリース会社の失敗の時、木野さんは副社長からの批判を3時間も聞き、“もう松下を辞めよう”と決心し、東京に帰り、がっかりして銀座を飲み歩いた後、朝2時頃帰宅しました。 

松下幸之助さんは、木野さんの自宅に電話して、木野さんの奥さんに、木野さんが帰ったらいつでも良いから電話するようにと伝えてあった。松下幸之助さんは自分の枕元の直通電話番号を木野さんの奥さんに伝えてあったとあります。

電話をすると、アメリカのリース会社の話ではなく、明日上野の美術館に代理で行ってくれと言われました。あくる日、松下の本社に行ったら、“君は松下にものすごく大きな損害を与えた。それを全部弁償してくれるまで、君を辞めさせるわけにはいかんのや”と言われた木野さん。東京に帰った時、山下社長からねぎらいと励ましの電話があったそうです。松下幸之助さんは厳しい人ですが、人情味のある、人間の良い面、悪い面を良く理解された方です。 

  1. “1円玉の無限大

“1円玉の無限大”のお話も、“1円玉は無視されてもそれでおしまい。”“人間というものは無視されると怨念が残る。人間の心は、マイナス無限大からプラス無限大まで幅広く変化するんだ” という松下幸之助さんの考えは、塾長の人生成果=考え方×努力×熱意と同じものと考えられます。

素直な心、美しい心はプラス無限大、悲観的な心、閉ざした心はマイナス無限大になります。人間の心はマイナス無限大からプラス無限大まで宇宙の大きさを持っていると木野さんは語っています。

松下幸之助さんは “人間に光を当てる経営”をされてこられた素晴らしい経営者です。