盛和塾 読後感想文 第三十四号

思いやる心が信頼を勝ち取る 

経営者は、率先垂範して仕事を進める、従業員に模範を示すことが必要です。朝は一番に仕事場に出向き、夜は最後に戸締りをするようでなければなりません。私は朝6時に、テキサスの事務所と朝礼をし、ロス事務所へは朝7時に出社します。ロス事務所の従業員は8時半に出社してきます。出社してくる従業員が、 “おはようございます。”  “Good morning”  と挨拶してくれます。夜は私が最後に、退社するのが通常です。 

従業員との朝礼での話し合い、毎週木曜日の経営思想の勉強会、午前、午後それぞれ10分間の体操、木曜日の昼食会と、いろいろな機会をとらえて、コミュニケーションを図ろうと努力しています。従業員家族のことも時々、たずねるようにしています。しかし、従業員が経営者として尊敬し、信頼してくれているのか、私にはわかりません。こういう事でしか、従業員とのコミュニケーションを図る術を知りません。 

それから、仕事の内容についての話し合い、従業員の仕事のレビュー、会社の月次決算の報告会、付加価値生産性の分析等を通して、仕事上のコミュニケーションを図ることも大事だと考えています。

日々の仕事を進めるにあたって 

  1. 原価意識

全従業員に原価意識を持ってもらう様にする為には、各従業員毎の採算性を算出し、その理解をはかることが重要だと思います。私共では、付加価値が各個人個人でどうなっているのか、毎月検討するようにしています。私共のタイムシートでは、今日1日どれだけの収入をあげられたのか、各自分かるようにしています。印刷機で使う、横8 ½インチ、縦11インチの紙は1枚いくらかを知る必要があると思います。こういうことを従業員の間で話されるようにしたいと思います。 

  1. 倹約

会社が大きくなっても、会社が小さかった時に習得した倹約を忘れないようにしなければなりません。 

  1. 経営思想

日々採算意識を高めていく為、又、売上を最大に、経費を最小にする為には、経営思想を毎日、事あるごとに確認し合い、学習することが必要です。会社経営を発展させ、長きにわたり従業員を守り、社会に貢献するためには、立派な経営思想が必要不可欠だと思います。 

  1. 現場主義

知識と経験があって初めて出来る。現場に立ち戻り、何が問題かを探し出すことが、まず必要なことです。机上での理論や、お話しや、解説では、解決は出来ません。現場には宝がある、現場には問題を解くためのカギがある と塾長は述べています。続けて、それを、 “経験則を重視する” と結論付けておられます。基本は、問題がある現場に行き、その問題がどうして発生しているのかを知り、その本当の原因を捉え、解決方法を発見した上で、その解決方法を実行することです。その為には、現場にかかわっている従業員と一緒に考えることが必要なのです。 

  1. 手の切れるような製品

製品やサービスはそれを作った、提供した人の心が現れます。完全主義の原則を全員が意識して神経を集中して、作業に当たるようにするべきだ と塾長は述べています。お客様に真心をお届けするという事だと思います。 

人生の価値と目的 

我々の人生にとって、地位、名誉、お金は何の価値もない、一生懸命に努力を続けていけば、自ずから利益は生まれてきます。と塾長は教えてくれています。死ぬ時は、皆が裸一貫で死んでいくわけですから、地位、名誉、お金は何の価値もないと考えます。 

人生の価値は何なのかということを考えた時、自分自身の “心を高める” ということが、その価値だと述べられています。よくある話ですが、大成功を収めた人の、お金を沢山手にした人の、人間が狂ってしまったということがあります。それは “心を高める” ことを忘れてしまったからだと思います。 

お釈迦様の説かれた戒律  “六波羅蜜” 、布施(ふせ)、自戒(じかい)、精進(しょうじん)、忍辱(にんにく)、禅定(ぜんじょう)、この5つのことを実行し、智慧(ちえ)に辿り着くというものです。この “六波羅蜜” を毎日考えることにより、“心を高める”  “心を浄化する” ことが出来ると塾長は述べています。 

活動の原点は、正義と公正の追求 

中坊公平弁護士のお話は、本当に心に響き、涙が出てきました。“弱きを助け、強きをくじく仕事” を選ばれた中坊弁護士には脱帽です。こんなに単純に、純粋に思う人はまれです。中坊弁護士のお父さんが、農家の家族がリヤカーを夫婦で引き、おじいさんが鍬をかついで家路を行く姿に、“幸せとはこんなことを言うんや。親にとって自分と同じ職業に就いてくれるのが一番嬉しいんや。”  幸せは遠いところにあるのではなく、自分の足許にある。それを知らない人が多い。“自分は幸せだ” と思うことが一番幸せなことだと中坊弁護士は諭してくれています。 

“自分の心に価値判断の基準を持つ” ということを住宅金融債権管理機構の社長をしておられた時に、実行されておられます。価値判断の基準が自分の心の中にありますから、自分が納得できる仕事だけをしますと言っておられ、自分が納得した生き方をされています。

現場に徹して原因を深く考える

中坊弁護士は言う。“現場には神が宿る。” 現場さえきちんと見ておけば、その中にある本質を必ず見つけることができます。会社で資金繰りが悪い時には、何が本当の原因かを順繰りにたどって行き、メーカーとして最も根本的な作業が不十分だったことを突きとめたとあります。 

中坊弁護士のいわれる “現場” は、彼自身が現物を手に取るということ。人の話を聞くだけでなく、常に自分が現場に行って実際に現物を手に取ることから、原因追求のすべてが始まるということ。つまり五感を使って、現場を見る。その上で、さらに第六感で物事に対処しなければならない。そして正しく考える為には正確な物差しが必要で、それを “智恵” と言う。知識ではなく、道理が物差しとなって正しい答えが得られる。 

現場を知っていると、裁判官を説得する迫力が付く、又、相手に連想させることが出来る。 

1995年森永ヒ素ミルク事件の時、130人の赤ちゃんが亡くなりました。後遺症が長年続き、14年目に被害者の親達は森永と国を相手取って訴訟を起こした。その弁護団長を引き受けようか迷った中坊弁護士は自分の損得で判断して、弁護団長を引き受けまいと思っていましたが、父親の弁護士に相談したところ、“公平  お父ちゃんはお前をそんな情け無い子に育てた覚えはない。お前は小さい頃から、ほんまに人様の役に立ったことがなかったやないか。それがやっと人様のお役に立つ仕事に誘われて逡巡するとは、どういうことや。”  と一喝されたそうです。“公平、弁護士というのは弱気を助け強気をくじく仕事や。”  と言われた意味がやっとわかったような気がしたと述べています。

被害家族の方々の気持ちを理解する為に、中坊弁護士は70以上の被害家族にお会いし、時には泊めてもらい被害家族の方々に寄り添ったそうです。こんなことまでして、現場主義を徹底できる人はいないと思います。現場主義を通じて、被害家族の方々が何を望んでおられるかを見つけ、それを訴え続け、周りの人々を説得していかれたように思います。私は涙が出てきました。ひとの為に尽くすとはこういうことなんだと、心にしみました。 

一燈照隅。万燈照国。 

中坊弁護士は森永ヒ素ミルク事件を通じて、次のように言っておられます。“お上とか公というのは、国家ではありません。私は縦の公よりも、自分たちの身の回り、自分の会社、自分の家族、そして自分が住んだり働いている地域といったものを含めた横の公の方がずっと大事。一人ひとりが一つの隅を照らしていけば、その国が明るくなります。そんなことをしても世の中は変わらないと諦めずに、一人ひとりが自分の職場なり、家庭において、横の公を考えてみんなのために働く気持ちがあれば、日本は良くなる” と結論づけられておられます。