盛和塾 読後感想文 第131号

仕事を考え尽くす

新しい事業を展開するときに、不安や心配を抱いてしてはなりません。新規事業展開は平坦な道ばかりではありません。一歩進めば壁に当たり、その壁を一つ一つクリアしていくという事の連続です。しかし、一抹の不安も抱いてはなりません。それには、その事業が成功するということ、そしてその成功へ至るプロセスをはっきりと見えるまで考え尽くしているからです。 

うまくいく仕事は最終ゴールまで見通しがきき始める前から自信めいたものがあり、“いつか来た道”を歩いているようなイメージが湧くものでなくてはならないのです。 

そのためには、常にテーマを考え続ける必要があります。疑問が一点もない、残らないくらい考え抜くのです。頭の中でシュミレーションを積極的にやり抜くのです。そうすると、ビジュアルな映像として頭にテーマが定着していきます。それはカラーで見えるほど鮮明でなければならないのです。 

この見えるということが、成功に至る確信と、人として行動をせしめる強い意志力を生み、成功へと導くのです。 

経営者意識を持つ 

たとえ社長一人が優れた能力を持ち、リーダーシップを発揮したとしても、現場を支える社員たちが経営者の視点で自主的に考え、行動しなければ、会社が成長発展し続けることはできないのです。 

経営者意識を持って戦略を組む 

この話はA営業部長が相談に来たときの話です。 

社員の方々は、各部門でいろいろな種類の製品を担当して、お客様に売りに行き、よく売れたものやあまり売れなかったもの、毎月の目標を立てています。A部長は現在の産業機械の状況を製品ごとに説明してくれました。稲盛塾長は、A部長の話を聞いていて、非常に重要な点が抜けていることに気がつかれました。 

営業の長にしても、製造の長にしても、非常に勤勉で真面目なのは良いのですが、それだけなのです。営業の例としていますと、誠実な売り子のレベルなのです。 

その原因は稲盛塾長が作っているのではないかと考えたのです。部下が営業がよくわかっていないのは、社長である自分自身の指導に問題があったのではないかと考えたのです。従業員をただ真面目に仕事するだけに育つようにしてしまったのです。 

  1. 社長の立場に立って相手を見極めろ

A部長は途中入社です。中途入社した営業担当の社員は最初から“技術の事は自分にはわからない”と思ってしまっています。ですから、技術については製造の人間に少し聞いただけでの中途半端な理解で、製品を売りに行っているのです。 

会社が成長発展するのには、幹部社員が素晴らしい経営者になるかどうかによって決まります。ですから、経営者とは何かということがわかっていないといけないのです。 

経営者とは何かと理解するためには、 A部長は産業機械門の営業の長ですから、自分が産業機械に使われるセラミックスを扱う商事会社の社長だと仮定することが大切です。商社なのです。いずれにしても、商事会社は、いずれもメーカーとの代理店契約を結んでいます。引き合いがあったとしても、自分が売り込みに行くにしても、まずメーカーの人間と相談します。例えば、良い製品があることを知っていて、“これは良い製品ですね。これをぜひ売らせてください。私の会社は、東南アジアに強いですよ。その代わり、我々のをマージンを高くしてください”と要求するとします。相手のメーカーが売ろうとしている製品のことを知らなければ、どこにも売りにいけませんので、徹底的に聞いていきます。 

それと同時に、向こうの従業員や経営者の態度もよく観察するのです。“どうもこの人は調子のいいことを言っているな”と感じる人からは、いい加減な製品を持たされるかもしれません。売った後に客先からクレームがついて、その対応で東南アジアを駆けずり回らないといけないということになれば、旅費ばかりがかかってしまいます。 

‘今はどこに向けて売っていますか”とメーカーの人に聞いたとします。その時メーカーの担当者が“このようなところで使われています。うちはどこへでも売っていきますよ”と自信を持って答えてくれる。そうしたメーカーは、実際にこちらの期待に応えてくれるものです。商事会社の社長、A部長は、メーカーをしっかりと理解して、メーカーの担当者との信頼関係を築いていくのです。 

多くの営業担当者は“これを売ろう”という自信の部分が弱いのです。売れるものに注力することが求められるのです。扱う製品が複数の製品であれば、相手によって臨機応変に行動するのです。 

また、いくら技術がわからないからといって、メーカーの担当の人と簡単な質疑応答で何の疑いも持たずに、自分の製品を売る人はいないと思います。もし、社長の立場で売ってクレームがつけば、自分の信用を失い、お金も回収できず、大きな損害を被ることになります。技術側の人間では無いのですが、技術がわからないなりに色々と聞いてみることが大切なのです。分からなければ、わからないなり、と真剣に相手の人物を見抜き、相手が本物かどうかがわかればいいのです。 

営業部は商事会社、製造部はメーカーです。商事会社として多くの従業員を抱えて、多くの事業を営んでいます。製造側の事業部、メーカーは、メーカーサイドの社長として経営することになります。 

我々が今売ろうとしている製品としてヒーターがあったとします。ヒーターについてメーカー側に聞きますと、いろいろなことがわかってきます。“これはいけそうだな”と思うなら、マーケットをど真剣に調べます。どこに行ってどう売るのか、常にシュミレーションするのです。その結果、“これは本当にいける”とわかれば、自信が湧いてきます。“この性能であれば、こうすれば売れるはずだ”という思いが強くなり、ヒーターをいくら売るかという目標が定まってきます。“見えてくるまで考え抜く”のです。後は一気呵成(いっきかせい)に行動に移して売っていくことになります。 

商事会社の社長として、“私の担当している京都セラミックというメーカーです。先日発表されたビジネスウィークでは、世界で技術で進んだ会社の十指に入っています。21世紀の会社と言われております。この会社のヒーターは、数年前から大量にアメリカに輸出されております。御社は今までのニクロム線を使っておられるそうですが、ぜひ、京セラの人ヒーターをお使いになるべきではないでしょうか”と誰に対しても言葉巧みに取り込めるはずです。 

営業の人が、“このヒーターは、ホンダさんに使ってもらっているから、日産や三菱自動車にも売れないか”と簡単に考えて、日産や三菱自動車に行きますと、“いや、うちはホンダさんとは違います”と言われて、“やっぱりだめでした”と言って帰ってくるのです。 

精魂込めて作った製品の性能に自信があれば、そのようなことではへこたれません。“なんとしても売ってみせる”という気持ちになります。“しまったオートチョークでは売れなかった。”しかし他に方法があるはずだと粘り強く頑張ることができます。 

  1. 製品を売るための戦略を組む

経営をしていく上で、作ってよし、売ってよしという両刀使いが必要なのです。それには、戦略が必要なのです。“売ってこい”と指示しても、成果が出ずに帰ってくる営業の社員に対して、“もう一度行ってこい“と言って指示します。妥協しないのです。製品を作る場合も同様です。 

商事会社の社長として“わが社はメーカーの代理店として、メーカーの製品を売って伸びていくのだ。”という意識を持って、代理、契約をしたメーカーの一連の製品をベースとして売り上げを伸ばしていく戦略が出てくるはずです。

ところが、部下に客先を回らせて、“だめでした。空振りでした。”と言われても営業を続けさせ、引っかかってきたお客からの注文を売り上げとする。これでは戦略ではありません。ただ客先を回って、見込みがありそうなものを売っていくだけでは、会社を大きくして一千億円の売り上げを目指すことはできません。 

“このくらいは売りたいなぁ”というような願望があるだけで、“このようにしているからこれだけの売り上げが立つ”という考えは無いのです。“この製品ならこの会社にも売れるはずだ。いろいろな会社に売っていけば半年先、一年先にはこれだけの売り上げになるはずだ”というシュミレーションが誰にもできていません。 

  1. 戦略があったからこそ工具事業は伸びた

京セラには他者に匹敵するような製品がありました。ところが最初は全然売れませんでした。戦略を持っていない人が工具の事業部長担当しているとしますと“これはあまり売れません。日本特殊陶業の者には勝てません。よその会社にも日本特殊陶業と同じような製品がありますし、うちがつけ入る隙なんてありません”と言ってせいぜい毎月五百万円位の売り上げしかありません。“売れないとおかしいのですが、やはり売れません。国内には大手3社があり、隙がないと思います。社長、今から参入したところで勝てる見込みがありません。”と言い訳をして終わっていたはずです。 

稲盛塾長が工具は絶対に売れると確信していました。配属された営業社員は“これを売ってこい”と言われて、“売れないわけがない。売れるのだ。売れないのはお前が悪い”と頭ごなしに言われて追い返されました。 

するとしばらくして、やっと一億円の利益が出せるようになりました。研究を続け、工具という分野において何とか一角を占めるまでになってきました。 

  1. 本気で“売ろう”と思わなければ戦略は組めない

京セラの産業機械は、創立以来歴史のある事業部ですが、いろいろな製品を多く扱っているのに売り上げが月五百万円程度なのです。工具はひとつの種類しか売っていないのに、月一億円の売り上げがあるのです。産業機械は潜在的に十億円程度の売り上げが見込める製品を多く抱えているのに、それだけのポテンシャルがあるという認識を持っていない。ですから戦力も組めないのです。 

営業社員でも、技術屋では無いのですが、自分が使っている製品を詳しく調べてその上でマーケットを観測するのです。マーケットをずっと見ていますと、売れるかどうか、売れるとすればどのあたりまで持っていけるかが分かってきます。目標に持っていけないときは、自分の展開の仕方がおかしいと考えて戦略を組んでいけば、もっと売り上げを伸ばせるはずです。 

営業部のA部長にこう言いました。

“お前のところはいろいろなお菓子を並べた駄菓子屋だ。いろいろなお菓子や飴を並べておいて“何でもあるからここから選んで買いなさい”と言っているだけで、“このお菓子は、この飴は、こういうふうに他と違い、美味しく栄養もあり体にとってもいいよ”と子供に呼びかけもしていないのです。 

例えばグリコはグリコーゲンを入れた飴を作り食べる“一粒三百メートル”として事業拡大してきました。グリコはあれほど大きな会社に成長しました。グリコには戦略があったのです。 

京セラの場合も営業部長が製品に惚れ込むほど調べて“これはアメリカでも売れるはずだ”という思いが湧いてきます。売れないのは自分のやり方や部下の使い方がおかしいのだと思うでなければおかしいのです。 

  1. 叱られる人ほどよく伸びる

工具のB君にはよく騙されました。“これは売れます”と嘘ばっかり言って人ばかり先に取られるので“今度嘘を言ったら承知せんぞ”と言ってよく叱っていました。B君は勝気だけはありました。“なんとしてもやらなければならない”と思っていますから、闘争心が旺盛でした。次から次へと提案が出てきます。 

商事会社を担当しているD君は、今1番伸びています。Dくんは稲盛塾長に1年中徹底的に叱られていました。B君のように勝手なことをするので叱られていたのです。叱られる理由はポジティブなものです。叱られない人はそれは向いていないからです。何もしなければ問題にならないので叱られないのです。 

ところで、何かの戦力を考えて実行しようとしますと、最初のうちは当然失敗しますから叱られます。D君は1年中叱られていました。D君は仕事の席ではない時に稲盛塾長に聞いてきました。“社長にとって、私はよっぽどの叱りやすいタイプですか”“あほ、趣味で叱っているのとは違うわい”と答えました。こういうことが社長に言えるのは、素晴らしいことなのです。社長を信頼しているからこそこんなことを社長に聞けるのです。親父に文句を言っているみたいなのです。 

他の人はあまり叱っていません。“良い子”はたくさんおります。しかし“良い子”はポジティブな事は何もしておらず、稲盛塾長に言われたことに素直なだけです。それでは、集団の長は務まりません。 

  1. 戦略を組むには、主体性が必要

バイオセラムの歯科用インプラントは某大学教授が“セラミックスでつくったらいいのではないか”というヒントを持って来たので、作ってみました。バイオセラムを売ると決めたのは稲盛塾長ですから、どうやって評価を上げていくか考えました。担当しているE君も逃げられません。E君は部長に何かにつけて言われないと、金を使っても失敗する。経営というのは必ずリスクと隣り合わせなのですが、その代わり心血を注いで成功した場合は大変大きな成果があります。 

最初は結果が良くなくても“これはいけるのだ”と強く思い、先を見通すのが戦略であり、戦略を正しく組むのが経営者の役割です。 

製品に惚れ込んで“これはいけるぞ”と思っています。相手の医者を説得するためには戦力を組めていますか。製品にも惚れ込んでもいないし、戦力も全然決めていません。経営者としての意識を持ってきますと、営業だけを考えるという感覚はありません。全てを見なければならないからです。 

経営者としての見方をして、主体性を持って自分で戦略組出したら、営業の製造も貿易も、事業所全体が大きく変わるのです。 

  1. 強い個性と人格を併せ持ち、過信を拝する

戦略をシュミレーションする上で大事なのは主体性です。主体性を持ってシュミレーションをしなければなりません。何もしない人は悪さもしませんが、個性もありません。主体性がある人には個性があります。個性が強い人は、我が強く、アグレッシブです。非常に強い個性が成功へと引っ張っていくのです。 

しかし成功したと思ったら、急に失速していきます。成功して登りつめたところで、急降下することが多いのです。成功の原因も個性であれば、没落の原因も同じ個性なのです。個性があるだけではなく、人格、人間性というものを併せ持つ必要があるのです。 

客観的に見れば見るほど、周りは売れないと言っているので、できないと思ってしまう。それを過信で進む人がいます。そのような人は大風呂敷を広げてもろくも失敗してしまうのです。戦略は出たけれど、その戦略が過信に基づくものだからです。 

  1. 強い思いが粘りの営業につながる

京セラのヒーターの例を取ります。京セラのヒーターが車のキャブレターに入っているか、別の会社では使われていないことを誰も少しもおかしいと思っていませんでした。“うちは本田さんとは違います”と言われたら、それまでで売るのが簡単なところにしか振り込みに行っていないのです。“他にはどこに入れるのか”と聞きますと“やってはいますがなかなか上手くいきません”といいます。絶対に売れると思って売るのか、売れればいいと思ってやっているのか。それによって結果が全然違います。 

製品が一つ売れれば、お客様からつぶさにその結果を聞いてみます。その結果が良好なものであれば、自信となって、営業の人間に“お前はこれを売れ、あそこが買ってくれているのだから売れるはずだ”と言えます。 

稲盛塾長はアメリカへ行って、アメリカの会社を回っていましたが、全然売れませんでした。それでもめげず、同じところを何度も尋ねて、ようやく抵抗芯体がTI(テキストインストルメント)に売れました。TI試験のレポートを読み込み“これはいける”と思い自信にして他の会社にも売ってきました。優秀な製品を持って一点突破するのは、工具やバイオセラムの場合も同じでした。一点突破して、風穴を開けて、お客様、その業界に乗り込み、他の製品の販売に道を作っていくのです。 

一度売れなくても“売れませんでした”と逃げ帰ってくるのではなく、“私の売り方がおかしいから売れないのだ”と考えて粘って売続けるのです。自分がおかしいのではなく、買ってくれない相手がおかしいと思っているのです。相手に何か事情があるように思っているのです。お客様サイドに何か問題があると納得して“売れませんでした”と言って引き下がる。それを納得せずに“これは安くて便利で品質の良いものですから、うちの製品を試してみるべきです”と粘るのです。 

来年も再来年も、その次も、経営者は事業で利益を得て、従業員を養っていかなければなりません。昇給もして、ボーナスも払って、全従業員に喜んでもらうためには“行きましたが売れませんでした”ではどうにもなりません。そういう思いがありますと、徹底的に粘る行動ができるのです。 

  1. 戦力に基づいたメーカーの買収

急成長をとげた電卓メーカーであるトライデント社については、電卓のブームが去った後に救いを求められました。京セラの役員会で支援について話したところ、“うちが今頃になってテコ入れするのはあまりにもクレイジーです。電卓メーカーはどこも潰れている中で、支援するなんて、どのような考えがあってのことですか”と誰もが言いました。 

ブームの最中に群雄割拠しているうちは、もののはずみで誰でもある程度は成功します。そのかわり、ブームが去った後は、悲惨な目に合うはずです。企業というのはどん底まで行ってしまったときに本当の経営力が問われます。 

“このような展開をすれば、いける。今は厳しい状態にあるが、その先を見て欲しい。うちが救済して再建させてみようではないか”と役員会で言って役員を納得させました。あえて危険を犯して戦略を組んだのです。常に事業の多角化を考えているので、偶然に入ってきた情報が、ちゃんとしっかり噛み合えば、逃してはいけません。これも最も素晴らしい経営方法なのです。 

このように戦略を組み、次の事業展開を進めてきたのですが、気がついてみますと、稲盛塾長一人がそのようなことを考えるようになっていて、後は誰もが真面目な忠実な社員になっていたのです。丁稚(でっち)になっていたのです。これは丁稚でよろしいという教育をしてきた稲盛塾長の責任であったと反省していました。 

企業の営業部長であれば、少なくとも自分は中堅企業の社長であるという考え方を持たなければならないのです。そう考えれば、自分で戦略を組んでいけるのです。 

企業が永遠に発展し続けるために 

  1. 現状に満足せず、次の展開を考える

経営者意識を持ち、主体的に戦略を立てられる人々が増えてこない限りは、企業が今後発展していく事はありません。 

現在扱っている製品の中で、もっと伸びるものがいくらでもあるはずです。工具でも、フライスに使う、金型に使う、工作機械に使うなど、いろいろな用途があります。新しいものを伸ばすためには、それをどうやって売っていくのかという戦略が見えていなければなりません。自分の中で鮮明な映像が描けていないために、どう手を打てばいいかという対応ができていないのです。ただ単に人をもらって、その範囲で役割を決めて、できるだけの対応するというようでは、経営者ではありません。 

例えば珈琲店の場合ですと、蝶ネクタイのマスター、かわいいウェイトレス、チラシも近所に配ります。また“うちは手製のコーヒーですから、新鮮でおいしいですよ”と言って、お客様を増やしていく。これだけでは、その店は良いのですが、企業として成長発展するための戦略が全くないのです。 

例えば、今度は缶のコーヒーを作って全国の自動販売機に並べて売ろう。またこの店は女の子に任せて、次のコーヒー店を開こう。どこに店を今後展開していこうかと、発展する為の戦略を考えるのです。 

京セラの人間全員が変身していけば、京セラは飛躍的に伸びるのです。自分は何を売るのか、マーケットの予測は、一生懸命考えてみると見えてくるのです。それが営業計画であり、事業計画となるのです。計画の中にある数字は単なる希望的な数字ではなく、一生懸命考えた末に見えて来た数字であるはずです。具体的にこうやっていきますという戦略があれば、数字はその後についてきます。 

自動車を攻めますといった場合、自社の特徴のある製品を武器にして一点突破するのです。“これが成功したら次はこれを攻めよう”と次から次へと挑戦していくのです。 

  1. 新規事業への挑戦

会社は永遠に成長発展していかなければなりません。そのためには、次から次へと新しい事業を手掛けていかなければなりません。 

エネルギーを大量に消費する社会になり、エネルギーが多様化していき、分散されたエネルギー源を求めなければならなくなってきています。太陽熱、原子力、地熱、風力、波浪など、いろいろな試みが行われています。エネルギーの多様化を求めていかない限り、全体のエネルギーをまかないきれないのです。 

この問題に何の対応もしない経営者と、こうした多様化していくエネルギーの中で、少なくともどれか一つのエネルギーを開発していった経営者とでは、会社の業績に大変な差がつくことになります。 

この様に大きなスケールでとらえ、遠い将来を見据えて、その時々の企業規模を考える人材が必要になっています。京セラは早くから太陽光電池の開発に着手しています。太陽熱温水器の事業化を始めます。また、ソーラーシステム事業部も立ち上げます。 

新幹線に乗っている三時間の間に、戦略を一生懸命考えました。熱媒体の使用、太陽電池を使った直流モーター、配管、貯湯槽等、をずっと考え続けました。 

そして近い将来、日立製作所に追いつきたい、少なくとも三洋電機、シャープと肩を並べるまでになりたいと考えています。 

  1. 経営や事業はトップの器で決まる

企業や事業というのはトップの器量、つまりスケール分しか大きくならないのです。器量というのは何かと言いますと、まさに先述したように、自分が扱っている製品を調べ抜いた上で持つ自信と愛着です。そのような自信と愛着を土台として、なんとしても売ろうとシュミレーションを重ねるのです。 

太陽光発電の場合ですと、試作のみならず、販売の流通まで見えています。シュミレーションを繰り返していき、いよいよ実行に移しますと“この道は頭の中で一度通ったことがある”“こっちにいったらあかん。こっちや”と頭の中で徹底的に考えていますと、潜在意識が働いてくるのです。シュミレーションを重ねて現実にひとつひとつ成功するたびに、器量というのは大きくなるのです。 

戦略と実行を繰り返していく過程で、器量が大きくなっていくのです。器量が大きくなるにつれて、会社の業績も伸びていきます。