盛和塾 読後感想文 第七十五号

会計は現代経営の中枢 

企業を長期的に発展させるためには、企業活動の実態が正確に把握されなければならない。真剣に経営に取り組もうとするなら、経営に関する数字はすべて、いかなる操作も加えられない、経営の実態をあらわす唯一の真実を示すものでなければならない。損益計算書や賃借対照表のすべての科目とその明細表は、誰から見ても、ひとつの間違いもない完璧なもの、会社の実態を100パーセント正しく表すものでなければならない。会計の資料は、経営者を目標まで正しく到達させるための指標なのです。 

その為に会計の基本的な原則が必要なのです。

  1. 迅速性の原則 - 直ちに会計処理をする
  2. 一対一対応の原則
  3. ダブルチェックの原則
  4. 筋肉質の経営原則
  5. 採算向上の原則
  6. 現金主義の原則
  7. 保守主義の原則
  8. ガラス張り経営の原則
  9. 当座買いの原則-必要なものを必要な時に

このような会計原則を実践していくことにより、正しい経営・長期的に企業を成長・発展させることが可能になります。こうした会計原則は、企業の経営思想の表われとも考えられるものですから、社長自ら理解し、社員に伝え、実践していくことが大事です。 

完璧主義の原則 

完璧主義とは、あいまいさや妥協を許すことなく、あらゆる仕事を細部にわたって完璧に仕上げることを目指すものであり、経営においてとるべき基本的な態度です。 

マクロとミクロ リーダは常にパーフェクトな決断を求められます。社長の経営判断は、その会社の運命を左右します。社長は従業員とその家族、顧客、株主、協力会社に対し、重大な責任を負っているのです。 

その責任を果たすため、経営者たるものは会社全体のマクロな仕事と同時に部下のやっているミクロの仕事も十分わかっていなければ、完璧な仕事はできないのです。 

創業者は、現場の細かいことから会社全体のことまでよくわかっています。二代目、三代目の社長は、現場のことをあまり知らないことが多いようです。創業者からマクロの帝王学は教わっていても、ミクロの現場のことはわかっていない。その為、経営者として本当の意味で会社を動かせないのです。会社のトップとして本当に自分の思う通りに経営をしていこうとするならば、足繫く現場へ出て、現場のふんいき、従業員の仕事の内容を知らなければなりません。マクロだけでなく、ミクロもわかっていなければ、経営者は自由自在に会社を経営することはできません。 

二代目社長は現場に出向け

創業者である塾長は、会社を始めた当初は末端の仕事にも携(たずさ)わりました。門の前の店が汚れていれば、自分で箒を持って掃除をしましたし、便所が汚れていれば、その掃除もしなければなりませんでした。そういう末端の仕事も行っていましたから、作業現場に誰がいて、そこでどのような仕事をしているかということまでわかっていました。 

従業員数が一万人近くになっても、塾長は足繫(あししげ)く現場に周りに、その理解に努めていました。アメーバ別の月次時間当り採算表を見ますと、責任者や従業員の顔まで思い出すことができたそうです。 

二代目、三代目経営者の方々のほとんどは、こうした叩(たた)き上げの経験がないまま、常務・専務などの役員に据(す)えられます。叩き上げの幹部連中に囲まれて、現場に疎(うと)い息子があとを継いで経営していくことになります。 

小さなことが見える人には大きなことが見えず、大きなことが見える人には小さなことが見えないのが普通です。しかし、中小零細企業といえでおも、経営していく以上は、現場で行われる小さなことも、会社方針決定といった大きなことも、同時に見ていく能力が要るのです。 

二代目、三代目は、従業員よりも早く出社して末端の仕事をする、常務・専務としての仕事をする時間を抑えて、大半の時間は現場に出向き、汗みどろになって現場の人たちと一緒に働く、そうすることにより、マクロとミクロの両方の能力を身につけ、りっぱな経営者が誕生するのです。 

100%達成でなければ

昨今の製造業では“不良品がゼロ”というのが当たり前というほど、品質に対する要求は厳しくなってきています。それはすべてのプロセスにおいて完璧な仕事ができていない限り、実現することは出来ない品質レベルです。とくに研究開発や製造では、わずかなミスさえ許されず、常に完璧な仕事が求められているのです。 

  1. ほんのわずかな不良品が会社を危うくする

新しい製品開発研究の場合、いくつかの薬品を混ぜることがありますが、どの物質の量とどの物質のどの量と混ぜ合わせるのか、混ぜる時間、温度、等を厳密に決め、それを目を離さずに観察して、工程が予定通りに進んでいるか、反応は思った通りになっているか、大変な労力と時間を要します。実際、開始から一週間、一か月経って、最終的にこういう薬品を加えて、ようやく新しい物質ができます。 

こうした作業の中で、もし最後の段階で量を少しでも間違えば、一か月かけて99%まで完成しかけていても一瞬にして灰に帰してしまいます。 

ソニーのリチウム電池の事件ですが、ノートパソコンの中で発熱・発火するという問題が起こりました。原因は製造工程で金属粉が混入したためにショートしたそうです。ソニーは不良品の回収をしたわけです。お客様が使っているパソコンのバッテリーを換えるだけのことですが、ソニーは回収に500億ほどの見込みを立てているそうです。しかし、この500億のロスだけではなく、お客様からの信用もなくしてしまったのです。 

このように不良品は、企業の存亡を左右するような大問題になってしまうのです。 

  1. 日米間の品質管理の考え方の差

アメリカでは航空宇宙分野では、最先端の技術を要する製品を作っています。大変厳しい品質を要求されます。AQL(Acceptable Quality Level、合格品質基準)という、この製品にはこうしたレベルの品質を最低保障しなさい、という基準がありました。人間が作る以上、100%はありえない。“千個のうち2個の不良品以下ならば、認めてあげましょう”と決めてあるのです。もちろん製品によってAQLの要求は異なります。最初から完璧になどできないと買う側が認めていて、不良品を見込んで買ってくれる。不良品が出た時には、お客様から苦情が出ます。しかし我社の製品はAQLをクリアしていますと主張しますと、“その通りだ”と認めてくれるのです。 

アメリカの製品の品質は不安定だといわれるようになりました。日本製品は故障が少なく、信頼性が高いといわれるようになりました。あらゆる分野で日本製品が優勢となって来ました。アメリカもパーフェクトを目指して品質管理の方法を導入するようになって来ています。 

ところが経理など事務職では、間違えば“すみません、すぐ直します”消しゴムで消して “はい、訂正しました” とするわけです。間違えば、消しゴムで訂正すればよいという感覚で仕事をしている人には、完璧な仕事は決してできないのです。 

少々の間違いぐらいは仕方がないと思う人がほとんどです。投資計画、採算管理にしろ、基礎となる数字に少しでも誤りがあれば、結局経営判断を誤ってしまうのです。 

完璧主義をまっとうするのは難しいことですが、その完璧主義を守ろうとする姿勢があるからこそ、ミスが起こりにくくなるのです。パーフェクトを目指してもミスがゼロになるわけではないかもしれない。しかし、だからといって99パーセント正しければよいということにはなりません。99パーセントで結構なら今度は90パーセントでも仕方がないということになる。いや、80パーセントでもいいじゃないかということになってしまうのです。そうすると会社の経営はどんどん甘くなっていき、社内の規律も絡んで、会社の業績も悪化していくのです。 

100パーセントは100パーセントなのです。売上や利益の計画にしても “100パーセントに達しなかったが、90パーセント出来たからよいではないか” とは受け入れられません。製造や営業の経営目標に対する実績についても、開発スケジュールや管理の仕事の正確さについても、完璧主義を貫くべきです。 

  1. 鉛筆で書く数字ひとつも完璧に

アメーバ経営の時間当り採算表を説明する時に、採算表の数字に誤りがあることが判明しました。経理部長は “あっ、そうでした”と言って消しゴムを持ってきて数字を直す。そして悪びれもせず、“はい、訂正しました” と採算表を直してくるのです。 

今訂正したのは2万円だ。製造現場では一円単位のコスト削減に苦慮しているのだから、一円の書き間違いさえも許せない。もし製造現場でそういうミスをすれば、全部が不良品になってしまいます。すなわち経理部長の作成した時間当り採算表は不良品です。不良品によって同僚に間違った情報を提出し、同僚の時間を無駄にして、判断を誤らせてしまうかもしれないのです。経理部長は、自分の作成した不良製品がどういう影響を及ぼすか考えて見ることが大事です。 

鉛筆でひとつ書くにも真剣でなければならないのです。 

厳しいチェックでパーフェクトを目ざす

経営において責任ある立場の人々が、自ら完璧主義を貫くよう肝に銘じていれば、資料の中のつじつまの合わない部分や数字のバランスが崩れているところに敏感に注意がいくようになります。そうしますと、資料をつくる側も自然に完璧主義が身につくようになります。会社全体に完璧主義を浸透させようとするのであれば、それが習い性となるまで数字をつくる側とチェックする側が努力していくことが必要不可欠なのです。 

  1. 完璧主義を習い性とせよ

経理部長は、経理社員が作成した損益計算書、賃借対照表を、数字の一つひとつについて、細心の注意を払うことが習い性になっていなければなりません。また、提出される資料が完璧にそろっているか、もれがないかもチェックすることが必要です。 

損益計算書             -        目次 本年度/昨年度対比

                              -        本年度通算(Year to Date) 本年度/昨年度対比

賃借対照表             -        月次 本年度/昨年度対比

                              -        期定明細表 本年度/昨年度対比

                              -        銀行勘定調整表

                              -        売掛金年令調査表

                              -        棚卸明細 製品グループ、原材料グループ

                              -        固定資産台帖

                              -        買掛金年令調査表

                              -        借入金明細表 

経営者や従業員が必要とする正確な資料が、完全に作成されていることが大事です。数字の正確性及び全部の資料が、タイミングよく作成されなければなりません。 

  1. 有意注意の日常を送る

何をするにしても対象物に対して集中して意を注ぐ、経営者はマクロとミクロをわからなければならないのですが、とくにミクロを理解するためには、経営者は、どんな些細なことにも全神経を集中して注意するということを習い性としなければなりません。 

大きな経営判断を迅速にしなければならないことがあります。常日頃からどんな些細なことにも注意を払うという習慣がついていますと、いざというときに、素早い正しい判断ができるのです。 

有意注意の日常を送っている経営者は、研ぎ澄まされた感覚をもっていますから、すばらしい判断ができるのです。大きな問題の前触れとなる小さなほころびを見抜く力、そこまで見抜けるようになるために、有意注意を習い性として、数字をひとつ書くにしても緊張感を持つようにしなければなりません。 

  1. たとえ難しくても100%を追求し続けよ

サッカーの練習の中で、ゴールへのシュート、練習も大変な努力が必要です。相手のゴールキーパーのちょっとしたスキをついて、コーナーにボールを蹴り込んでいかなければなりません。試合では、練習以上にゴールにシュートし、得点するのは、その成功率は、恐らく50%以下だと思います。 

100%ゴールに蹴り込むことは難しいかもしれません。難しいけれども100%でありたいと思って、選手が練習に励む、コーチもその気持ちで指導に当たる。100%を追求することが大事です。“100%を要求しても無理だ。要求することがおかしい” と思って指導しておれば、80%、やがて70%に妥協するようになってしまいます。 

ダブルチェックの原則 

ダブルチェックとは、経営のみならず、あらゆる分野で人と組織の健全性を守る保護メカニズムです。仕事が公明正大にガラス張りの中で進められるということは、その仕事に従事する人を不測の事態から守ることになります。その結果、事務そのものの信頼性と会社の組織の健全性を守ることになります。

人に罪を作らせない

塾長は“人の心をベースに経営する”を根幹として京セラの経営にあたって来ました。“人の心”を一番大切にする。ところが、“人の心” はうつろいやすく、不確かなものでもあります。しかし、一旦心が通い合いだしますと、これほど頼りになるものは他にはありません。 

このように人の心は一番頼りにできるのですが、ふとしたはずみで過ちを犯してしまうという弱い面もあります。人の心をベースとして経営するとするなら、“人の心” が持つ弱さから社員を守るという思いも必要です。ダブルチェックの原則はここからスタートしました。人間不信や性悪説を背景としたものではなく、むしろ従業員に対する愛情であり、人に間違いを犯させてはならないという考え方なのです。 

よしんば出来心が起こったとしても、それができないような仕組みを作っておけば、1人の人間を罪に追い込まなくても済むのです。ダブルチェックの原則は、従業員が人間として正しく仕事に従事することができる為の、保護システムなわけです。 

  1. ダブルチェックで従業員に罪を犯させない

経理を任され、金庫を預かっている人が、家庭の事情で出費がかさんで二万円ほど足りなくなった。とりあえず今日二万円だけお借りしよう、三日後に主人の給与が入ってくるから、その時に返せばよい、と思って金庫から二万円を出してしまう。しかしこういう人は、お金の使い方が良く分かっていないため。二万円の返済もできず、また金庫から借りてしまう。盗もうとしたのではないのです。 

出来心で盗んでしまうこともあります。自分が記帳から出納まですべて一手にまかされている、誰もチェックはしない。十万円くらいくすねてもわからないだろう。そんなに大それた悪いことではないだろうと、出来心がふっと湧いて来る。 

ダブルチェックを行い、出納を勝手に扱えないようにしてあげれば、出来心が起こっても不正を働けなくなります。 

  1. 経営者はシステムの一貫性を厳守せよ

社員に罪を作らせないように、ダブルチェックのシステムを作るのはいいのですが、その際には会社のすべての業務に一貫性がなければならないのです。モノを買うにしてもカネを払うにしても、すべての業務において一貫してダブルチェックが行われなければなりません。 

製造部から依頼された部品の購入があったとします。購買部は検品した後、検収表、請求書、注文書を添付した支払い依頼を経理部に提出します。経理部は一連の書類を確認した後、支払います。このようにダブルチェックシステムは機能します。 

経理課長は今日は忙しい、支払い伝票は後で作成するから、とりあえず払っておくように、と指示してしまうことがあります。ダブルチェックせずに支払いをしてはならないと決まっているのに、そのルールを破ってしまう。 

よくあるケースは、社長が一貫性を破ってしまうケースです。“出張するのに現金十万円用意してくれ。後で出張申請書を作成するから” と言って伝票もないまま経理からお金を持っていく。社長は出張から帰ってきたらきちんと精算するので問題はない、と思うのです。しかし、課長や社長がダブルチェックのシステムを破ってしまうのを見た従業員は、“課長や社長も特例を設けたのだから” とルールを破ってしまうのです。 

こうしますと、ダブルチェックのシステムは崩壊してしまうのです。自分が導入したダブルチェックのシステムを社長自ら破壊してしまっては、経営はできません。 

ダブルチェックの原則を間違いの発見・防止のためのテクニックと考える人もいます。しかし、本当の目的・考えは人を大切にする職場を作るために、全社員が守るべきルールなのです。お互いにチェックし合い、お互いの間違いをなくしていこうとする緊張感のある職場づくりが目的なのです。 

具体的なシステムの構築は経営者の仕事

入出金の取り扱い

入出金の管理においては、お金を出し入れする人と入金伝票を作成する人を必ず分けることが原則です。 

小口現金の場合

例えば、毎月月初めに$500の現金があったとします。出納係は他の部署から支払い伝票や領収書を受け取り、現金を支払います。その時、残りの現金と領収書の金額の合計はいつも$500になっています。 

現金出納記帳担当者は、支払い伝票/領収書をベースに入出金-現金出納帳を作成していきます。 

こうして現金出納者と記帳者は別々の人が担当します。 

“その会社の経理がしっかりしているのか、だらしないのかを知るには、現金出納帳を見るのが一番だ。少額の現金出納もばかにしてはいけない、すべてに影響するのだ” 

資材の支払いの場合

支払い担当者は、伝票が正しく発行されたものかどうかをチェックして支払うのですが、伝票に基づいてであって、自分の意思や判断によるものではありません。支払いが必要な部署の職員は、支払い伝票を正確に記載し、証拠書類を用意して支払い担当者(経理部)に支払いを依頼しなければなりません。購買担当者は発注書/検収伝票/納品書/請求書を確認します。 

入金処理の場合

振り込みがあった場合は、その入金に関わる売掛金担当部署に連絡し、入金内容を明確にした伝票を起票してもらい、入金処理をします。お金を扱う担当者は入金伝票を発行してはならないのです。 

入金を確認した経理担当者は、得意先の売掛金を消し込みします。このようにして、入金はダブルチェックのシステムに沿って処理されなければなりません。 

会社印鑑の取り扱い

印鑑の管理について、塾長は、忙しくて時間がない為、自分なりのシステムを考えました。印箱は二重にして、外箱は手提げ金庫、内箱は小型の印鑑箱とする。そして内側の鍵の管理者である捺印者(経理部長)と外箱の鍵の管理者(経理課長)とを必ず別の者によって管理し、相互にチェックできる様にしたのでした。 

内箱は必ず外箱の中に保管します。捺印する時だけ内箱は外箱から出します。内箱を閉める時はあるべき鍵が収納されていることを別の人(経理課長)に確認してもらって施錠してもらいます。内箱/外箱は耐火金庫の中に保管されています。耐火金庫の開閉はまた別の者(経理係長)が行います。 

耐火金庫を開ける人、外箱を開ける人、内箱を開ける人/捺印する人、というように分けておくのです。 

金庫の管理

耐火金庫がシリンダー錠とダイヤル錠とを備えている場合は、必ず両方を施錠し、印鑑箱と同じように別々の者が開錠するのです。金庫は営業時間内でも施錠し、必要があって開ける時は、必ず立会人を置いて、複数の人間で金庫からの出し入れを行うようにします。 

購入手続

例えば製造部が物品やサービスの購入をする時は、購買部に購入依頼伝票を発行します。購買部から発注してもらいます。製造部が仕入業者に直接電話したり、値段や納期の交渉をすることは禁じるべきです。 

製造担当者は物を作るプロであって、物を買うプロではありません。今ではその製品が市場に溢れていて、値段が暴落していることを知らず、以前に買った高い値段のままで発注してしまう、ということにもなりかねません。購買部に任せれば、十分にマーケットの値段を調べた上で、一番適切な値段で買ってくれます。製造部が勝手に発注・購入したことにより、結局は高いものを買ってしまって損をすることになります。 

ダブルチェックは、業者に対する確実な支払いを保証することにもなります。製造部が業者に直接連絡して、すぐに部品を納入してくれ、発注伝票は後で発行するから、と業者に依頼します。業者は発注書も納品書もなしで部品を届けてくれました。業者から、“何ヶ月経っても、あの時の支払いがありません” と購買部に連絡が入りました。購買部が調べましたが、発注伝票がないのです。製造部の担当者に問い正しても、“どうだったかな、そうだったかな” という返事が返って来ました。結局、業者の方に大変な迷惑をかけてしまいました。 

この例からもわかりますが、ダブルチェックのシステムの則(のっと)り、購買部門を通してモノを買うことが必要なのです。 

反対に京セラでは、ある会社の研究部門の人から “すぐ持って来い、急ぐんだ” と電話が入り、夜中、部品を納入しました。その人に品物を渡し、受注伝票も渡しました。しかし受領票をもらっていなかったのです。京セラでは売上となっています。お客様の研究部門では、買ったことになっていませんでした。 

売掛金・買掛金の管理

営業は通常の営業活動はもちろん、売掛金の入金まで責任を持つというのが原則です。売掛金の管理は、営業管理部が行い、残高の明細を営業に報告して、契約通りの入金をうながすとともに、滞留しているものについて、その原因と対策を明確にして、早急に解決するよう指示します。営業担当者は営業管理部が発行する領収書を持って、客先に集金しに行きます。小切手、手形はすぐに本社経理部に送られ、入金処理がなされます。営業管理部は売掛金の消し込みをし、売掛金管理をします。同時に本社経理部も売掛金管理をし、営業管理部の売掛金と毎月照合します。客先から振り込まれた入金も本社経理部の管理下にある銀行口座に入金処理され、営業管理部に入金報告をし、売掛金元帳の消し込みをします。 

売掛金については営業に責任があります。各営業所営業経理と本社経理はそれぞれ売掛金入金、残高を管理します。 

買掛金については、購買管理部は検収にともなう買掛金計上、買掛金残高を担当し、買掛金支払は本社経理部が担当して集中管理します。買掛管理部からの請求書支払いの依頼があった場合、経理部はその請求書の承認を確認し、支払いをします。 

このように売掛金・買掛金の管理についてもダブルチェックを徹底します。このダブルチェックのシステムが会社で機能しているか確認するのは、社長の重要な仕事なのです。部下がやっているからいいじゃないか、ではいけません。 

作業屑の処理

作業屑を業者に売却することがあります。この時、担当者1名に任せ、業者に作業屑を売却していることがあります。業者の不正確な秤量(ひょうりょう)が見過ごされることがよくあります。担当の従業員が業者と結託して、リベートをもらう不正が起こって来ます。社長は従業員が罪を犯さないようにしなければなりません。担当者を2名にして、秤量の確認や売値の検討をして、業者に売却するようにすべきです。 

もとから悪い人間であったためではなく、ダブルチェックを受けず、業者にそそのかされ、ついつい出来心で罪を犯してしまった。屑処理といえどもダブルチェックをして社員に罪を作らせない様にしなければなりません。 

自動販売機、公衆電話の現金回収

自動販売機が社内に設置されている場合があります。総務担当者の1人に任せているケースがあります。小さなことですが、お互いにチェックできるように必ず2人で金額を確認し、毎回、経理部担当者に報告すべきです。金額の大小とは関係なく必ずダブルチェックの原則は守ることが大事です。 

一見当たり前のことですが、当たり前のことを確実に守らせていくことこそが、実際には難しいのです。ただし、これを指示するだけでは徹底されないのです。トップ自らが、本当にダブルチェックの原則が守られているか、現場に出向き、時々チェックすることが必要です。繰り返し確認していくことで、制度は社内に定着していきます。